バリュー投資入門(2) バフェット2017(2)

中湖 康太

2.  株式への投資を事業への投資と考える

 バフェットのバリュー投資において最も重視する投資指標が一株当たり簿価BVPSとその成長性、株価との関係であることを前回説明しました。企業の本来の、あるいは潜在的なファンダメンタル・バリュー(本源的価値)が株価に照らして過小評価されていると判断でき、その判断に相当程度な確信が持てるときに投資を決定するわけです。

チャート・パターンでは投資しない

 これに関連してバフェットの投資哲学の根本をなすのが、株式への投資をキャピタルゲインや配当取りを目的としたマネタリーな行動ではなく、事業への投資として考える、ということです。

 バフェットは次のように株主への手紙で言っています。

 「チャーリー[1] と私はバークシャーが所有する普通株式を、チャート・パターンやアナリストの目標株価、メディアに登場する評論家の意見によって売買されるチッカーシンボル(株式コード)と見るのではなく、事業への持分と見ている」

 “Charlie and I view the marketable common stocks that Berkshire owns as interests in businesses, not as ticker symbols to be bought or sold based on their ‘chart’ patterns, the ‘target’ prices of analysts or the opinions of media pundits.”

短期 vs. 中長期

 時間軸で考えれば、バフェットの投資は、短期的なものではなく、中長期的なものです。株式市場で過小評価されている投資対象のファンダメンタルバリューが適正に評価されるのを辛抱強く待つ、というものです。事業への投資として考えているわけですから、株価が適正化されても、直ちに売却ということにはなりません。あくまでバークシャー・ハサウェイの事業・投資戦略の展開とその運営の中で決定されるわけです。

 これは、中長期的な投資を行う場合にはとても重要な発想です。逆に言えば、このような発想を持てない場合は、短期的なマネタリーな投資行動になりやすいと言えるでしょう。それは、デイトレーダーの、あるいはそれに近い行動パターンです。

利益の積み上がりが株式のバリューを増加させる:動的な視点

 さらに付け加えるべきは、バフェットは投資対象のバリューが年々の利益の積み上がりにより高まっていくことにポイントを置いているということです。単にある時点での企業の価値が株価に反映されず割安と評価されているという静的な見方ではありません。ここが単なる、低PBR投資とは決定的に異なる点です。

 バフェットは事業を通して、配当という株主還元、内部留保の積み上がりによって、その企業の価値、株式価値が高まっていくことを重視しているのです。これは動的な視点です。

「市場は短期には投票機だが長期には計量機」(ベン・グレアムの格言)

 バフェットは次のように言っています。

 「バリューと留保利益の関係は、先に説明したように、短期的に検出することは難しいでしょう。株式は上昇し、また下落するもので、一見すると年々の基礎となるバリューの積み上げとのつながりが無いようにも見えます。しかし、中長期的には、私がしばしば引用するベン・グレアムの格言『市場は短期的には投票機であるが、長期的には計量機である』が真実であることが明らかになるのです」

 “The connection of value-building to retained earnings that I’ve just described will be impossible to detect in the short term. Stocks surge and swoon, seemingly untethered to any year-to-year buildup in their underlying value. Over time, however, Ben Graham’s oft-quoted maxim proves true: ‘In the short-run, the market is a voting machine; in the long-run, however, it becomes a weighing machine.’”

忍耐が必要、しかし確実性が高いバリュー投資

 バリューを見極めて、事業に投資をする。そしてそのバリューが実現するのを辛抱強く待つ。バリュー投資には忍耐が必要なのです。しかし、バリューが着実に積み上がっていけば、いずれそれが市場で顕在化する可能性は高いのです。バリュー投資は投資のリターン、果実獲得の確実性が高い投資スタイルであると言えるでしょう。

[1] チャーリー・マンガー(Charlie Munger); バークシャー・ハサウェイの副会長

(続く)

2018/7/25

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