リカード「経済学原理」を歩く-87 外国貿易-10

中湖 康太

【コメント】有名なポルトガルと英国のワインと布の生産費(労働投入量)を使った比較生産費説(比較優位説)の説明。2国間、2商品生産モデル。

 ポルトガルの生産費(労働投入量)がワイン80、布90、英国の生産費がワインが120、布が100とする。この場合、ポルトガルがワインを、英国が布を生産して交換(貿易)することが双方の利益になる。

 ポルトガルはワイン、布の2商品の生産費で絶対優位にある。一方、ポルトガルはワイン、英国は布の生産費で比較優位にある。

 但し、リカードが資本移動の困難さを理由に多国間での比較優位説を説明しているのは、妥当ではないいのではないか。リカードが労働価値説をとっていることからも本質的には、労働の移動の困難さによるものであろう。それともリカードに何かの意図があったのか。

(訳)
ポルトガルでワインを生産するには年間80人の労働が必要で、布を生産するには90人の労働が必要になるとする。したがって、ポルトガルにとってはワインを輸出して、布を輸入することが有利になる。この交換は、ポルトガルが輸入する商品(ここでは布)が、英国で生産するより少ない労働で、ポルトガルで生産できる場合でも生じることになる。ポルトガルでは90人の労働で布を生産することができるが、その生産に100人の労働が必要な国から輸入した方が有利である。なぜなら、その資本をワインの生産に使うことで、ポルトガルは、その資本を布の生産に向けるよりも、より多くの布を英国から輸入することができるからだ。

このように英国は100人の労働の生産物を80人の労働の生産物と交換する。このような交換は同一国内では行われない。英国人100の労働は、英国人80の労働とは交換されない。しかし、英国人100の労働の生産物は、ポルトガル人80、ロシア人60、東インド人120人の労働の生産物と交換することはできる。1国内と多数国間の交換の違いは、簡単に説明することができる。それは資本移動の困難さの違いである。資本はより収益率の高い資本の利用を求めて移動するが、同一国内のる地方から他の地方に移動することに比べて、ある国から他の国に移動することはより困難である。1国内と多数国間の交換の違いは、簡単に説明することができる。それは資本移動の困難さの違いである。資本はより収益率の高い利用を求めて移動するが、同一国内のる地方から他の地方に移動することに比べて、ある国から他の国に移動することはより困難である。

(original text)
To produce the wine in Portugal, might require only the labour of eighty men for one year, and to produce the cloth in the same country, might require the labour of ninety men for the same time. It would therefore be advantageous for her to export wine in exchange for cloth. This exchange might even take place, notwithstanding that the commodity imported by Portugal could be produced there with less labour than in England. Though she could make the cloth with the labour of ninety men, she would import it from a country where it required the labour of 100 men to produce it, because it would be advantageous to her rather to employ her capital in the production of wine, for which she would obtain more cloth from England, than she could produce by diverting a portion of her capital from the cultivation of vines to the manufacture of cloth.

Thus, England would give the produce of the labour of 100 men for the produce of the labour of 80. Such an exchange could not take place between the individuals of the same country. The labour of 100 Englishmen cannot be given for that of 80 Englishmen, but the produce of the labour of 100 Englishmen may be given for the produce of the labour of 80 Portuguese, 60 Russians, or 120 East Indians. The difference in this respect, between a single country and many, is easily accounted for, by considering the difficulty with which capital moves from one country to another, to seek a more profitable employment, and the activity with which it invariably passes from one province to another in the same country.[14]

Kota Nakako

2019/4/5

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