ファクター投資とヘッジファンド: JAI 2018夏号(2)

中湖 康太

2. “Are Hedge Funds on the Other Side of the Low-Volatility Trade?” by David Blitz
ヘッジファンドと低ボラティリティ・アノマリーの関係について

ファクター投資と市場の効率性

近年注目を浴びているファクター投資に関する研究。ファクター投資がアノマリーを生じ、その逆サイドの取引を行う裁定取引の制約を受けないヘッジファンドに超過リターンを提供しうるのではないか、という問いが生ずる。ファクター投資と市場の効率性に関する研究といってもよいだろう。

ファクター投資の逆サイド

ファクター投資家は、当該ファクターに関連した証券からなるポートフォリオを保有する。必然的に非ファクター投資家はその反対のポジションを取ることになるだろう。例えば、レバレッジ(借入金)を使えないがゆえに、高ベータ、高ボラティリティのポートフォリオを多くの投資家が持ったとする。すると他の投資家は逆サイド、つまり低ボラティリティのポートフォリオに配分をすることになるだろう。

この逆サイドのポジションを持つ投資家は一体だれだろうか。そしてその投資家はそのアブノーマルなポートフォリオを持つことによるリスクに対する報酬を得ることができるのだろうか。

裁定取引の制約要因

低ボラティリティ・アノマリーは、レバレッジ、空売り、ベンチマークの制約など、裁定取引を行うための制約によって生ずると考えられている。こういった制約から本来自由であるヘッジファンドは、スマートマネーであり、もしそういったアノマリーがあるとすれば、それにより恩恵を受けるであろう。

誇張されている懸念

同研究によれば、低ボラティリティ株と高ボランティア株のリターンの差は、ヘッジファンドのリターンの重要な説明要因であるが、裁定取引の制約要因は、低ボラティリティ・アノマリーのキードライバーではなく、低ボラティリティのポジションが混み合うという懸念は誇張されている、という。

以上

2018/9/21

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