日銀バランスシートについての予備的考察(2) 米FRBとの比較 A preliminary analysis on BOJ’s balance sheet (2) – vs. FRB

中湖 康太

日銀バランスシートについての予備的考察(2) 米FRBとの比較
A preliminary analysis on BOJ’s balance sheet (2) – Comparison with FRB

FRBのバランスシートは、BOJの1.8倍; 日米GDP比は、1:6 
FRB’s balance sheet size is 1.8x, that of BOJ; Japan and US GDP 1:6

米FRBの2022年12月期のバランスシートの総資産は$8,569 billion (1,285兆円; 1ドル150円で換算)である。日銀BOJが$4,900 billion (735兆円; 2023年3月期)なので、その1.8倍弱だ。

バランスシート(総資産)のGDP比*は、FRBが33.7%、BOJが115.6%である。日銀のバランスシートのサイズは、GDP比で、米国の3.4倍強と極めて高い。

* 2022年の名目GDPは、米国 $25,462 billion、日本$4,237 billion。米国のGDPは日本の6.0倍である。 (出所: IMF)

FRBの長期国債等保有は、BOJの約1.2倍
FRB’s Treasury Bonds and MBS holding is 1.2x BOJ’s JGB and ETF holding.

FRB保有の米国財務省証券は$5,729 billion だが、このうち$3,564 billionは短期証券。長期の財務省証券は、$2,165 billion (324兆円)になる。さらに、政府系MBS(Federal agency and government-sponsored enterprise mortgage-backed securities, net; 住宅ローン担保証券)を$2,697 billion を保有する。これは、2008年のサブプライム危機(いわゆるリーマンショック)の名残だ。米FRBのバランスシートも無傷ではない。

FRBの長期財務省証券とMBSの合計は、$4,862 billion (729兆円)となる。これは、日銀BOJ保有の長期国債は576兆円、ETFの合計613兆円の約1.2倍になる。おおまかにいってほぼ同規模といってよい。経済(GDP)規模の違い(1:6)を考慮すれば、BOJの保有額が相対的に極めて大きいということが言えるだろう。

FRBの長期国債等ー当座預金比率は55%、BOJは95%
FRB’s Treasury Bonds etc. to Current Deposit is 55% vs. BOJ’s  95%

負債サイドをみてみよう。着目点は、長期証券等(MBS含む)$4,862 billionがどのようにファイナンスされているか、という点である。負債サイドの主な項目は、連銀券$2,258 billion、証券現先(System Open Market Account) $2,889 billion、当座預金(Deposits: Depository Institutions)$2,684。当座預金は、長期財務省証券等(MBS含む)の55%だ。BOJ保有の長期国債576兆円に対して当座預金546兆円は、95%に相当する(但し、FRBの場合、売り現先を加えると、$5,573 billionとなり、長期証券等の114%となる)。

一方、損益計算書(P/L)を見ると、当期純利益は$58.8 billion (8.8兆円)となっている。BOJ同様、ここから国庫納付金$59.4(8.9兆円)が拠出されている。

BOJの長期国債等保有ー総資産比率は、FRBより28%ポイント高い
FRB’s Treasury bonds etc. to Total Assets is 58% vs. BOJ’s 85%.

以上、大まかな総括をすると、FRBのバランスシートもALM上、問題がないとはいえない。しかし、経済GDP規模の違い(1:6)、総資産に対する、長期国債等(MBS等含む)の総資産に対する比率が、BOJにおいて28%ポイント高い (FRB 58%、BOJ 85%)ことから、BOJのバランスシート問題がより深刻ではないか、という感がある 。

米国債の買い手は多様 日本国債は日銀に集中
US Government Bonds – Various Investors vs. JGBs – BOJ concentrated.  

より重要なことは、日本においては、マイナス金利、YCCによって国債の買い手が、BOJに集中していることがあげられる。米国債の買い手は多様だ。

昨年Q4からの金利引き上げもあり、米国債への需要は増大している。日本においては金利が、短期金利だけでなく、長期金利もYCCによってコントロール/操作され、マイナス金利、低金利が維持されている。

市場メカニズムに基づく金利形成(多様な投資家)への移行か、または異次元緩和YCCの半永久化?
Market mechanism-based interest rates formation or semi-permanent YCC?

日本において、BOJが抱えた大量の国債を多様な投資家に需要される、つまり、市場メカニズムにもとづいた金利形成にシフトできるかどうか、あるいは異次元緩和YCCは半永久的に維持できるものなのか、今後の注目点であろう。

以上、あくまで予備的、試験的(tentative)な考察である。
Please note the above analysis is preliminary and tentative.

By Kota Nakako

2023/10/24

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