‘経済・投資 Money’ カテゴリ

リカード「経済学原理」を歩く-120 生産物への課税-9 貨幣数量説

2019-06-18
【コメント】リカードは、ここで貨幣数量説に立って説明している。貨幣供給量の増大により貨幣賃金は上昇するが、労働者は以前と同じ必需品の量しか購入できない。貨幣はたんなる媒介に過ぎず、実物経済の相対価値には影響を与えない、とする。   (訳) 鉱山からの貴金属の流入、または銀行権限の乱用による貨幣価値の下落は、食料価格上昇のもういとつの原因である。それは生産量を変化させるわけではない。労働者の数にも、労働への需要にも影響を与えない。というのも資本の増加も減少も起こらないからだ。労働者に分配・供給される必需品の量は、労働の需給による必需品への相対的な需給に依存している。貨幣は量が表わされるたんなるミーディアム(媒介)にすぎない。労働、必需品の需給が変わることはない。労働者への実質的な報酬は変わらない。貨幣賃金は上昇するが、労働者は以前と同じ必需品の量しか購入できない。この原則に反...
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リカード「経済学原理」を歩く-119 生産物への課税-8 穀物価格と賃金

2019-06-18
【コメント】リカードは、穀物価格が実需にもとづき、賃金の上昇の後に生ずれば労働者の困窮は生じないとする。そして穀物価格を差額地代論、つまり限界費用原理に基づいて説明する。   (訳) 高い穀物価格が需要増によるものであるときは、いつも賃金高に続いて生じるものだ。というのも需要は、人々の生活の糧として、それを欲し、購入することが増えなければ増加することはないからだ。資本の増加は、当然として労働の雇用者間の競争を増やし、その結果、賃金は上昇する。賃金の上昇は、直ぐに食料に支出されるわけではなく、第一に、労働者の他の楽しみのために支出される。しかし、改善された状況は、結婚をうながし、その家庭を養うための食料への需要の増加に結びつく。そして、当然の成り行きとして、食料への支出が、当初、賃金が支出された他の楽しみをしのぐことになる。穀物の上昇は、需要増によるものだ。なぜなら社会...
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リカード「経済学原理」を歩く-118 生産物への課税-7 最低賃金規制の無効性

2019-06-16
【コメント】リカードは、食料価格によって名目賃金を規制する貧民者救助法(poor laws)は、労働者の救済にはつながらず、食料価格をさらに引き上げるだけだとする。追加的な食料の輸入以外には、いかなる法律も救済にはならない、と主張する。   (訳) 不作により必需品の価格は上昇する。高い価格は、それによって消費を供給に一致させる唯一の方法である。もし、すべての穀物の購入者が豊かなら、価格はいくらでも上昇するだろう。しかし、結果は変わることはない。価格の高騰によって、貧困者は通常の消費を削減することを強いられる。そして、需要は供給の限界にまで引き下げられることになる。このような状況においては、食料価格によって名目賃金を規制する政策ほど馬鹿らしいものはないが、貧民者救助法の間違えた適用によって、このようなことがしばしば行われているのである。このような方法は労働者に本当の救済を与...
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リカード「経済学原理」を歩く-117 生産物への課税-6 賃金への影響

2019-06-15
【コメント】リカードは、生産物への課税に対する、第二の反対、不服について述べる。食料、必需品価格の上昇の要因には様々なものがあり、影響の仕方も状況によって異なり、それらを区別して考察することが必要だとする。   (訳) 第二の反対、不服については、穀物価格の上昇と賃金の上昇の間には、かなりの時間があるから、その間に、下層階級の人々が非常に厳しい悲惨な状況におかれるだろうということである。これについて、わたしは次のように答えるだろう。賃金の生産物の価格への反応のしかたは、状況によって異なり、あまりはっきりしないだろう。穀物価格の上昇は賃金には全く影響与えない場合もあるし、賃金の上昇が穀物価格の上昇に先立って生じる場合もある。また、その影響が非常にゆっくりに表われる場合もあれば、直ちに表われることもあるだろう。 必需品の価格が賃金を規律すると主張する人々は、いつも社会における...
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リカード「経済学原理」を歩く-116 生産物への課税-5 課税負担の問題

2019-06-14
【コメント】リカードは、生産物への課税は、消費者が消費に応じて負担し、賃金を引き上げるとこで利益を引き下げる一方、地代、配当、利子にはその課税が及ばないため、不平等である、という議論がでてくるだろうとする。そこで地代、配当、利子への課税の権限が議会によって与えられることになるだろう。自由主義国の気風にふさわしくないものであるにせよ、それによって、すべての所得に課税され、人々が詮索しあう不快なことは少なくなるかもしれない、と述べる。しかし、実際には地主は穀物地代の減少をこうむり、また、配当も利益の減少の影響を受けるわけであり、ここに地代、配当の二重課税の問題が生ずるだろう。課税負担の分配は悩ましい問題である。 生産物への税金は、消費者への影響の限りにおいては、平等な税といえるかもしれない。しかし、利益への影響については不公平といえるだろう。地主、資本家には作用するものではないからである。地...
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リカード「経済学原理」を歩く-115 生産物への課税-4 利益への影響

2019-06-13
【コメント】リカードは、生産物への課税により、それに応じて賃金が上昇し、利益は減少する、と述べる。課税により生産物の価格は上昇し、諸商品の価格も、構成要素となる生産物の割合に応じて上昇する。しかし、生存可能最低賃金は、それ以上下がることはできないし、食料、必需品に転嫁された課税分上昇する。それは利益を侵食することになる。①課税による消費者価格の上昇、②賃金の上昇、という2つの作用により総余剰が減少し(①)、分配(①、②)が影響を受ける。 穀物への税金は、その消費者がこうむることになる。穀物の価格は、その税金の割合分、その他の商品に比べて高くなる。他の商品の要素に含まれる生産物の比率に比例して、それを打ちけす何か他の要因がなければ、その価格が高くなる。商品は間接的に課税されることになり、それらの価格は、その税金の割合だけ高くなる。 A tax on corn, then, woul...
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リカード「経済学原理」を歩く-114 生産物への課税-3 穀物地代に影響

2019-06-12
【コメント】リカードは生産物への課税により、貨幣地代は変化しないが、穀物地代は減少すると数値例により説明する。前段で述べたように、土地の貨幣地代と穀物地代は、同じ比率では変化しないためである。地主への実質価値での分配を減少させることになる。 (訳) 生産物への課税、地租、また10分の1税の場合においても、土地の貨幣地代は同じのままだが、穀物地代は変化するだろう。 先に仮定したように、耕作中の土地に3つの等級があり、同量の資本が投入された場合、以下のような生産量が得られるとする。 土地の等級 穀物生産量(クォ―ター) 第1         180 第2         170 第3         160 第1等級の土地の地代は20クォーター(第3等級と第1等級の差)となる。第2等級の土地の地代は10クォーター(第3等級と第2等級の差)となる。第3等級の土地に...
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リカード「経済学原理」を歩く-113 生産物への課税-2 (補足)

2019-06-10
【コメント】(補足)  一言つけ加えるべきは、実質的に消費者が負担するといっても、生産者の粗利益は、実質的な生産者価格の減少と需要量の減少により、減少するだろうということである。    ...
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リカード「経済学原理」を歩く-113 生産物への課税-2

2019-06-09
【コメント】リカードは、生産物への課税は、実質的には消費者によって負担されることになる、また、地代、賃金に転嫁することもできない、とする。生産者の供給曲線が限界費用曲線であることは、課税されようが課税されまいが変わらない。つまり、生産物への課税分だけ供給曲線は上方にシフトする。需要曲線が変化しないとすれば、市場価格は上昇し、需要量(したがって供給量)が減少することになる。課税分は、消費者余剰の中から支払われることになる。くりかえしになるが、納税主体が生産者であるにしても、実質的な負担者は消費者であり、市場の効率性はそこなわれる(総余剰が減少する)。リカードの議論には抜け目がない。   (訳) もし、生産物の価格が生産者の税金を補うだけ上昇しなかったなら、利益が一般的な水準よりも低くなるところで取引、生産を止めるになるだろう。そして、おとろえない需要により、生産物価格が上昇...
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リカード「経済学原理」を歩く-112 生産物への課税-1

2019-06-08
CHAPTER VIII. TAXES ON RAW PRODUCE. 第9章 生産物への課税 【コメント】まず、生産物の価格は、生産にかかる限界的な費用(それが土地にかかるものであれ、資本にかかるものであれ)で決定されることを説明する。生産物はコモディティーなので、完全競争市場の均衡条件「価格=限界費用」があてはまる。リカードはミクロ経済学の大原則を述べているわけだ。そして、生産者に課される税金は、いかなる種類のものであれ、生産費の上昇を意味し、価格を引き上げると述べる。 (訳) 本書の前半で述べたように、穀物の価格は、地代を支払わない(限界的な)土地、またはその土地に投入される資本にかかる限界的な生産費によって決まるという原則を説明した。したがって、生産費のいかなる上昇も価格を引き上げることになるし、いかなる減少も価格を引き下げる。より質の悪い土地を耕作する必要性、また...
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