‘経済・投資 Money’ カテゴリ
ケインズの投資-18 即座の調整 Keynes’ Investment-18 Immediate re-adjustment
2025-07-24
(F.C.スコットへの書簡 1938.6.7 続き)
少数のしかるべき証券への集中投資
スコットへの書簡(1938.6.7)のIIIで、ケインズは、ポジション調整を急ぐ必要はない、と前置きした上で、「しかしながら早急にすべきことがひとつあります」と保有銘柄の見直しを求める。いわば放りっぱなしになった証券を整理して、しかるべき証券に集中投資を薦める内容だ。少数の優れたと判断した証券への集中投資は、ケインズの投資三原則のひとつだ。
ケインズの説得術
もうひとつここで触れたいのはケインズの説得術の一端だ。ケインズは、経済学者であると同時に、政府代表として国際金融交渉、シティでは資産運用を担当するなど優れた実務家であった。その説得術は、まず第一に、相手の考え方をよく聞く、尊重する、敬意を払う、そして、第二に持論を展開していく、というものだった。(KNコメント)
(以下、ケインズの書簡から... → 続きを読む
ケインズの投資について-16 変動と価値毀損の違い Keynes’ investment activities-16 Fluctuations and intrinsic loss of capital
2025-07-21
相場変動による下落と本源的価値の棄損は異なる
ケインズは、前述したように1924年初頭から1946年に死去するまで、プロヴィンシャル保険会社の資産運用に関わっている。同社のマネジング・ディレクターであるフランシス・スコットとしばしば書簡を交わしている。投資会社においてはしばしばあることだが、両者には意見の相違があった。
(F.C.スコットへの書簡 1938年6月7日)
親愛なるフランシス、
時間ができましたので、5月2日にもらった手紙に詳しく返信します。
I
あいまい怪しげ銘柄による失敗・しくじり(Stumers)
運用のパフォーマンスについて事後評価(post mortem)することは重要です。大切なのは多くの銘柄からなる投資ポートフォリオのパフォーマンスを台無しにする失敗・しくじり(stummers)をしないことです。それらは、価値の下落が単に相場変動によるものでなく、本... → 続きを読む
UK 不動産調査 (5) カーディフ
2025-06-20
UK 不動産調査 (5) カーディフ
ウェールズ政府主導のサステナブルな成長戦略 - 70超の日本企業が進出
グリーンエナジー、AI、化合物半導体などサステナブルな成長戦略を進めるウェールズには、トヨタ、ソニー、パナソニックなど70社を超える日本企業が進出している。ウェールズの魅力は、①地理的優位性(ロンドンやEU市場へのアクセスの良さ)、②事業コスト効率が良い(土地、人件費などがロンドン、南東イングランドに比べて低い)、③人材力・教育機関との共創がある、④政府の支援体制(投資、税制、事業立上げ)がある、⑤すでに70社超が進出し、日本企業コミュニティー・ネットワークが構築されている、ことなどがある。
ウェールズの首都カーディフ ロンドンからGWRで約2時間半
カーディフは、ウェールズの首都で、人口約36万人、ロンドンから西約250kmにある。ロンドン・パディントン駅からグレート・ウ... → 続きを読む
ロンドン 不動産調査 (3) サービトン
2025-06-09
ロンドン 不動産調査 (3) サービトン
ウィンブルドン南西8キロ程の閑静な郊外住宅地 - ウォータールー駅から約30分
サービトンは、ウィンブルドンの南西8キロ、ウィンブルドン駅からサウス・ウェスタン・レイルウェイで約10分、ロンドン・ウォータールー駅から約30分(南西20キロ)にある郊外住宅地だ。グレーター・ロンドンに属し、サリー州にある。
サービトン駅からロング・ディットンまで散策
今回は、サービトン駅からサービトン・ゴルフ・コース近くのロング・ディットンまで30分程のんびりと歩きながら街並みを楽しんだ。ウィンブルドンほどの知名度はないが、イングランドらしい閑静な郊外住宅地だ。実際に歩いた、サービトン駅から、グレンバック・ロード(Glenbuck Rd.)、ウォルポール・ロード(Walpole Rd.)、ラブレス・ロード(Lovelace Rd.)、セント・メアリーズ・ロード... → 続きを読む
ロンドン 不動産調査 (2) ウィンブルドン
2025-06-08
ロンドン 不動産調査 (2) ウィンブルドン
ロンドンの高級郊外型住宅地 - 国際的名声
ウィンブルドン・テニスが開催される、全英クラブ(オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ)のあるウィンブルドン・パーク・エリアの不動産を見てみたい。ロンドン勤務時代(1988-1992)に3年半住んだエリアである。久しぶりに訪れたが(3月下旬)、やはり、当時の様子と大きな変化は感じられなかった。ウィンブルドン・ビレッジからチャーチロードを下っていくと、右手にウィンブルドン・パーク、左手に全英クラブが見えてくる。広々として緑豊かな英国ならではの風景である。
私たち家族は、当時、英国では一般的な半戸建て(semi-detached)の家を借りて住んでいた。しかし、この地域に最もふさわしいのは、例えば、ウィンブルドン・パークから広大なウィンブルドン・コモンへ抜けるクイーンズメア・ロ... → 続きを読む
ロンドン 不動産調査 (1) サウス・ケンジントン・エリア
2025-06-07
ロンドン 不動産調査 (1) サウス・ケンジントン・エリア
ロンドンの超高級住宅地
ロンドン地下鉄ディストリクト・ライン、サウス・ケンジントン駅、グロスター・ロード駅周辺のフラットを中心に見てゆきたい。サウス・ケンジントンは、ロンドン勤務(1988-92)の時(大分前になるが)、当初、3カ月程住んでいたところだ。チェルシー・クロイスターという短期滞在型のアパートメントに住んでいたので、ある程度土地勘、馴染みがある。今回、行ってみて(3月下旬)、当時の面影を残し、多くの滞在者で賑わっていた。
生活利便性高い
サウス・ケンジントン・エリアは、北にケンジントン宮殿、南にチェルシーを擁し、クロムウェル・ロードが東西に走り、道路交通にも優れている。東にハロッズなどがあるナイツブリッジ、ハイド・パーク・コーナーにも程近い。スーパー、レストランなどのお店もあり、主としてアパートメントハウスの建ち... → 続きを読む
ケインズの投資について-14-3 1937年後半の市場見通し-3 Keynes’ Investments-14 -3 His views on the market in later 1937-3
2025-05-11
以前よりも楽観的になれない
ケインズは、1937年後半の市場調整では、いつになく市場の先行きについて、悲観的な見方をしている。それは、「流動性選好が強く市場を支配して」おり、「期待よりも恐怖が支配している」、という表現に集約されるだろう。そして、「市場が上昇するには、自律的な経済の牽引だけでなく、継続的な景気刺激策が必要」と述べている。
(書簡訳 - F.C. スコットへの書簡(1937.9.4) 続き)
一方、上記にも関わらず、私は市場について以前よりも楽観的になれない状況です。(株式)市場が上昇するには、自律的な経済の牽引だけでなく、継続的な景気刺激策が必要だと感じています。たとえ、前述のような状態だけだったとしても景気後退に陥りかねない状況です。当面は、他で述べた流動性選好が強く市場を支配すると考えています。ほとんど全ての投機的、半投機的証券の保有者が、次の不況が遅かれ早かれ訪... → 続きを読む
ケインズの投資について-14-1 1937年後半の市場見通し Keynes’ Investments-14-1 His views on the market in later 1937
2025-05-10
1937年後半の市場見通し
ケインズは、その2日後、F.C.スコット宛に自らの見解を療養中のウェールズ、ルーチンから送っている。(ケインズは、36年夏より体調が優れず、37年半ばに心臓発作で倒れた。46年に同じく心臓発作で亡くなるまで、ケインズは心臓病に悩まされた。)
流動性選好、リスク回避の傾向を強める市場
F.C.スコットへの手紙 (1937年9月4日)
親愛なるスコット、
順調にいけば今月末にここを発つ予定です。10月末の役員会に出席するつもりです。ナショナル・ミューチュアルの役員会が水曜にあるので、木曜であれば良いな、と思っています。
とりあえず、見通しを大幅に変更しているので、その内容を要約してお伝えしたいと思います。
私は深刻なりセッションにはならないだろうと予測しています。米国では、今秋か来春には景気が回復することが期待されます。英米において、モーメンタムを欠く... → 続きを読む
ケインズの投資について-13 コモディティー投資 3 Keynes’ Investments-13 Investment in Commodities
2025-05-07
試練の年 - 1937年後半
1937年後半は、ケインズにとっては試練の時となった。ケインズは引き続き、強気の立場をとったが、商品相場での損失額は膨らんだ。7月半ばにR.F.カーンに次のように述べている。
現状売却することにあまり前向きではありません。もっとも米国のポジションを少々減らす機会がおとずれるかもしれないと期待しています。(ウォール街の連中のように下落する市場で利食っていくことができれば。) それが彼らがリッチである理由ですから。
ベアマーケットは通常は好機 - しかし・・・
8月下旬になってケインズはより悲観的、手仕舞いの気分になり、カーンに次のように言う。
これまで、リセションの時には、辛抱強く待つことにしていました。カバーポジションを取ってさえいれば、後は待つのみ、と考えてきました。カバーポジションが安全と思えるなら、何ら煩うことはない。しかし、今回については、そ... → 続きを読む
ケインズの投資について-11 コモディティー投資-1 Keynes’ Investments-10 Investment in Commodities
2025-05-01
コモディティー投資-1
一般理論の利子論、貨幣論の形成に寄与したコモディティーへの投資
ケインズはコモディティーへの投資も積極的に行った。コモディティーへの投機・投資の経験、及びそこから得られた洞察は、ケインズの一般理論に見られる理論形成に多大な影響を与えていると思われる。それは何よりも、貨幣の特性、つまり、一般理論の中核をなす、「流動性プレミアム」のクローズアップにある。そして、その流動性プレミアム(liquidity premium)は、貨幣の歴史の初期において貨幣の役割を果たしたコモディティーとの比較によって、浮き彫りにされているのである。
ケインズの詳細なコモディティー・リサーチ
ケインズは、コモディティーの需給動向に関する詳細なレポートを、1923から30年にかけて作成している。需要と供給は経済学のエッセンス中のエッセンスである。その意味で、ケインズが、他の財と異なり、品... → 続きを読む
« 以前の記事 新しい記事 »














