‘経済・投資 Money’ カテゴリ
ケインズの投資-22 一石二鳥の取引 Keynes’ Investment-22 To Kill two birds with one stone
2025-08-04
一石二鳥の取引
裁定取引
ケインズの投資法は、基本的には本質的価値(Intrinsic Value)に基づくバリュー投資であるが、ミスプライスの発見による裁定取引的な運用があった。下記書簡で「市場の混乱の結果であるように見え・・・運用担当者が利回りテーブルをじっくり見れば直ちに修正される」との表現からそれをうかがい知ることができる。
ここでケインズは、長期債から同様の信用力の短期債へのスイッチで同じかより良い利回りを確保できる、稀な(逆さまな)が状況が生じていると指摘、早期に動くことをうながしている。
タックス・シールド
ケインズはさらに、当会計年度に、税対策のために、あえて出した実現損をタックス・シールドとして利用し、長期債の売却の実現益をぶつけることによる節税効果について述べている。
長期債から短期債へのスイッチにより、長期債でキャピタルゲインをとる。その資金で、短期債を購... → 続きを読む
投資-21 米英証券の相対パフォーマンス Keynes’ Investment-21 Relative performance of US and UK securities
2025-08-02
(F.C.スコットへの書簡1939.9.20の続き)
米国株から英国株へのスイッチを推奨
相対パフォーマンス
ケインズは、F.C.スコットに、相対パフォーマンスの観点(米国株の大幅アウトパフォーマンス)から、米国株から英国株への早期のスイッチを推奨する。しかし、もし米国株の売却資金を現金で置いておくなら、米国株の売却をスローダウンすべき、としている。ここでも現金、流動性選好にクギを刺している。
生涯所得の8割超を証券投資で稼ぐ
株への選好、これは広義にはプロダクティブ・アセットへの選好とも言えると思うが、ケインズの投資スタイルの特徴、エッセンスともいえる。ケインズは、通貨、商品への投機・投資もかなり行ったが、株式への投資が最も多かった。そして、何よりも株式投資で一番儲けた。生涯の投資活動からの稼ぎの8割超は株式を中心とする証券投資によってもたらされた。(以上、KNコメント)
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ケインズの投資-20 大戦突入直後の相場観 Keynes’ Investment-20 Immediate after the outbreak of war
2025-08-01
大戦突入直後のケインズの相場観
1939年9月1日、ドイツはポーランドに侵攻、ヨーロッパにおける第二次世界大戦が始まった。米国の株式市場は、戦争の勃発とそれに伴う経済の不確実性から、一時的に下落した。そのような状況下でのケインズの相場観を示している。
売られ過ぎ - バリュー投資の視点
それは、相場の大幅な下落を、行き過ぎたものとみなし、売却資金を再投資すべき、というものだ。この際、単にテクニカルな視点で判断していないことが重要だ。それは、本源的価値に照らして行き過ぎ、したがって割安である、というバリュー投資の視点だ。「本源的価値に関わらず」(apart from its intrinsic merits)、「プルデンシャルが、本当に40%の価値を失ったと思われますか?」(Do you really think that the Prudential has lost 40 p... → 続きを読む
ケインズの投資-19 選択と集中 Keynes’ Investment-19 Selection and Concentration
2025-07-25
(F.C.スコットへの書簡 1938.6.7 続き)
選択と集中
投資三原則の第2 - 少数証券への集中投資
ケインズは中途半端なプロヴィンシャルのポートフォリオの見直しについて、否定的な意見を述べている。これは冒頭のあいまいで怪しげな証券への投資がパフォーマンスを下げているという指摘にも通じる。同じ4-5%の利回りを目指すにしても、リスク・リターンがあいまいな中間証券より、最高グレードのギルト証券と、ハイ・イールド証券の組合せの方を好んだ。
ケインズの投資三原則の二、少数証券への集中投資に繋がる。つまり、プロフェッショナルな投資家といえども、十分な調査、分析、評価できる証券の数は限られている。数が多くなれば、おのずと散漫になる。また、何かあったときにポジションを調整、変更することも難しくなる。
ギルト証券で、最低限の利回りを確保する一方、よく精通し絞られた少数のハイ・イールド証... → 続きを読む
ケインズの投資-18 即座の調整 Keynes’ Investment-18 Immediate re-adjustment
2025-07-24
(F.C.スコットへの書簡 1938.6.7 続き)
少数のしかるべき証券への集中投資
スコットへの書簡(1938.6.7)のIIIで、ケインズは、ポジション調整を急ぐ必要はない、と前置きした上で、「しかしながら早急にすべきことがひとつあります」と保有銘柄の見直しを求める。いわば放りっぱなしになった証券を整理して、しかるべき証券に集中投資を薦める内容だ。少数の優れたと判断した証券への集中投資は、ケインズの投資三原則のひとつだ。
ケインズの説得術
もうひとつここで触れたいのはケインズの説得術の一端だ。ケインズは、経済学者であると同時に、政府代表として国際金融交渉、シティでは資産運用を担当するなど優れた実務家であった。その説得術は、まず第一に、相手の考え方をよく聞く、尊重する、敬意を払う、そして、第二に持論を展開していく、というものだった。(KNコメント)
(以下、ケインズの書簡から... → 続きを読む
ケインズの投資-17 ポートフォリオ運用の妙 Keynes’ Investment-17 The whole art of portfolio investment
2025-07-23
ポートフォリオ運用の妙
(F.C.スコットへの書簡 1938.6.7 続き)
II
ケインズのリスク選好とアクティブ運用
ケインズはProvincialのポートフォリオ運用、保険会社であるゆえに債券の保有比率が高くとるという制約の下で、①できるだけ普通株の比率を高める、②サブ・アセット・クラス間の保有比率を状況に応じ柔軟に変化させる、③普通株でリターンを高める、④不動産、抵当証券など非流動資産は最低限に抑える、という意見を述べている。
保険会社のポートフォリオという性質上、債券の保有比率が高くとった保守的なものなると思われるが、そのなかでも、できるだけ普通株の比率を高めたアクティブ運用をしようというケインズの姿勢があらわれている。F.C.スコットは、より保守的な運用を主張しているわけだ。
リスク選好がより高く、株式のアクティブ運用に長けたケインズならではの指摘といえる。(by ... → 続きを読む
ケインズの投資について-16 変動と価値毀損の違い Keynes’ investment activities-16 Fluctuations and intrinsic loss of capital
2025-07-21
相場変動による下落と本源的価値の棄損は異なる
ケインズは、前述したように1924年初頭から1946年に死去するまで、プロヴィンシャル保険会社の資産運用に関わっている。同社のマネジング・ディレクターであるフランシス・スコットとしばしば書簡を交わしている。投資会社においてはしばしばあることだが、両者には意見の相違があった。
(F.C.スコットへの書簡 1938年6月7日)
親愛なるフランシス、
時間ができましたので、5月2日にもらった手紙に詳しく返信します。
I
あいまい怪しげ銘柄による失敗・しくじり(Stumers)
運用のパフォーマンスについて事後評価(post mortem)することは重要です。大切なのは多くの銘柄からなる投資ポートフォリオのパフォーマンスを台無しにする失敗・しくじり(stummers)をしないことです。それらは、価値の下落が単に相場変動によるものでなく、本... → 続きを読む
UK 不動産調査 (5) カーディフ
2025-06-20
UK 不動産調査 (5) カーディフ
ウェールズ政府主導のサステナブルな成長戦略 - 70超の日本企業が進出
グリーンエナジー、AI、化合物半導体などサステナブルな成長戦略を進めるウェールズには、トヨタ、ソニー、パナソニックなど70社を超える日本企業が進出している。ウェールズの魅力は、①地理的優位性(ロンドンやEU市場へのアクセスの良さ)、②事業コスト効率が良い(土地、人件費などがロンドン、南東イングランドに比べて低い)、③人材力・教育機関との共創がある、④政府の支援体制(投資、税制、事業立上げ)がある、⑤すでに70社超が進出し、日本企業コミュニティー・ネットワークが構築されている、ことなどがある。
ウェールズの首都カーディフ ロンドンからGWRで約2時間半
カーディフは、ウェールズの首都で、人口約36万人、ロンドンから西約250kmにある。ロンドン・パディントン駅からグレート・ウ... → 続きを読む
ロンドン 不動産調査 (3) サービトン
2025-06-09
ロンドン 不動産調査 (3) サービトン
ウィンブルドン南西8キロ程の閑静な郊外住宅地 - ウォータールー駅から約30分
サービトンは、ウィンブルドンの南西8キロ、ウィンブルドン駅からサウス・ウェスタン・レイルウェイで約10分、ロンドン・ウォータールー駅から約30分(南西20キロ)にある郊外住宅地だ。グレーター・ロンドンに属し、サリー州にある。
サービトン駅からロング・ディットンまで散策
今回は、サービトン駅からサービトン・ゴルフ・コース近くのロング・ディットンまで30分程のんびりと歩きながら街並みを楽しんだ。ウィンブルドンほどの知名度はないが、イングランドらしい閑静な郊外住宅地だ。実際に歩いた、サービトン駅から、グレンバック・ロード(Glenbuck Rd.)、ウォルポール・ロード(Walpole Rd.)、ラブレス・ロード(Lovelace Rd.)、セント・メアリーズ・ロード... → 続きを読む
ロンドン 不動産調査 (2) ウィンブルドン
2025-06-08
ロンドン 不動産調査 (2) ウィンブルドン
ロンドンの高級郊外型住宅地 - 国際的名声
ウィンブルドン・テニスが開催される、全英クラブ(オールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブ)のあるウィンブルドン・パーク・エリアの不動産を見てみたい。ロンドン勤務時代(1988-1992)に3年半住んだエリアである。久しぶりに訪れたが(3月下旬)、やはり、当時の様子と大きな変化は感じられなかった。ウィンブルドン・ビレッジからチャーチロードを下っていくと、右手にウィンブルドン・パーク、左手に全英クラブが見えてくる。広々として緑豊かな英国ならではの風景である。
私たち家族は、当時、英国では一般的な半戸建て(semi-detached)の家を借りて住んでいた。しかし、この地域に最もふさわしいのは、例えば、ウィンブルドン・パークから広大なウィンブルドン・コモンへ抜けるクイーンズメア・ロ... → 続きを読む
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