‘経済・投資 Money’ カテゴリ

ケインズの投資-39 一般的意見と反対の立場をとること Keynes’ Investments-39 Go contrary to general opinion

2025-09-10
一般的意見と反対の立場をとること "Go contrary to general opinion" 1940年代のカレッジの基金の運用について、シティのバンカーでもあるジャスパー・リドリーとのやり取りがある。豪ドル建て債券への投資についてジャスパーが反対する。豪州の評判と豪ドルの将来についての懸念がその理由だ。 逆張り(コントラリアン) ここで、ケインズは、「投資の主要な原則は、一般的意見と反対の立場をとること」であると、自らの立場を明らかにする。そして、「誰もがそのメリットについて同意(シティの正統的意見)している投資は必然的に割高になり、投資対象として魅力が無くなる」とし、「ほとんどの人が同意していないということが、投資では肝心であり、その二つ*は両立しません」と述べている。 * 一般的意見と割安感 (KN注) バリュー投資の真髄 この短い書簡は、バリュー投資に基づく逆張り...
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ケインズの投資-38 バリュー投資の先駆者ケインズ Keynes’ Investments-38 Inventor of Value Investment

2025-09-08
キングス・カレッジ・エステート委員会への覚書 1938年5月8日 (続き) 以下は、「キングス・カレッジ・エステート委員会への覚書」(1938年5月8日)の後半。 バリュー投資の先駆者ケインズ ここで、ケインズは、投資の三原則を上げている。バリュー投資の先駆といえる内容だ。ケインズは、前述で、自らを「信用循環投資の発明者」と呼んでいるが、これは、ケインズ一流の逆説的表現、皮肉といってよい。ここでは、信用循環投資はできない、実行性が無いということを述べている。実際には、バリュー投資の有効性を説いている。そして、ほぼ100%信用循環投資を行ったとしても、バリュー投資の結果は、それを上回っていることを、事後評価から明らかにしている。 また、日々の市場価格の無い不動産と比して、上場株式を投機的で、ゲームの性格を帯びたもの、社会的価値の無いものと見ることの誤りも指摘している。「投機家は気づい...
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ケインズの投資-37 カレッジのアウトパフォーマンスと大きな過ち Keynes’ Investments-37 College’s outperformance and serious mistakes

2025-09-04
カレッジのアウトパフォーマンスと大きな過ち 以下は、R.F.カーンへの手紙(1938.5.5)に続いてのキングス・カレッジ・エステート委員会への正式な覚書(1938.5.8)だ。ケインズは、3つの表に基づいて、カレッジのパフォーマンスを評価している。基本的に、1929年から1938年の9年間の長期にわたるものだ。 カレッジのアウトパフォーマンス 表1は、キングス・カレッジとケインズが運用に関わった他の2機関を比べたもの。キングスのより優れたパフォーマンスを示している。 表2は、カレッジのファンドB、チェストと上記2機関の英国普通株と米国証券のパフォーマンス。キングスのより優れたパフォーマンスは、英国普通株と米国証券が主としてもたらしたものであり、他機関との比較でこれが浮き彫りになっている。 表3は、カレッジと、上記2機関に加え、プルデンシャル、アクチュアリーズ、 ニューヨ...
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ケインズの投資-36 信用循環投資の発明者 Keynes’ Investments-36 Inventor of Credit Cylcle Investment

2025-09-01
信用循環投資の発明者ケインズ R.F.カーンへの書簡(1938.5.5)は、ニューヨークダウが前年7月から3月に50%近く下落した後のもの。 金利の一般理論と信用循環投資 ケインズは、経済学者として、とくに金利に関して深く鋭い洞察力をもっていた。ケインズ経済学の革新性は、勿論マクロ経済学の創始ということにあるのだが、その一面は、古典派経済学の金利理論を明らかにした上で、新たな「金利の一般理論」("The genral theory of the rate of interest")を打ち立てたことだ。そこでは、金利を、限界消費性向、資本の限界効率と並んで、独立変数として総需要、国民所得の決定要因としてとらえた。当然のことながら、金利変動、信用循環にはことさら鋭い目をもっていた。信用循環投資は、その強みを生かした、ケインズならではの投資法であったともいえる。ケインズが自らを「主たる発明...
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ケインズの投資-35 選択と分散と集中 Keynes’ Investments-35 Selection, Diversification and Concentration

2025-08-31
厳選され程よく分散された少数銘柄への集中投資のすすめ [プロヴィンシャルのための覚書 (38.3.7) 続き] 3つの機関:類似性と違い ケインズは、自らが関わる3つの機関、キングス、ナショナル・ミューチュアル、プロヴィンシャルの類似性と違いについて説明を試みている。大まかに同様だと言っているが、特にキングスが優れているといっている。それは、知識と判断力をもった少数の投資口、証券により大きく投資しているためだ。 ファンドの規模と投資数 ファンドの規模は、キングス:プロヴィンシャル:ナショナル・ミューチュアルで1 : 2.5 : 10 だ。一方、異なる投資の数は、キングス130、プロヴィンシャル325、N.M.275。 プロヴィンシャルは、異なる投資の数を、100程度までに絞ることによってパフォーマンスを大きく改善できる可能性が高い、と指摘している。 選択と分散と集中 ここで...
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ケインズの投資-34 プルデシャルとの比較 Keynes’ Investments-34 Comparisons with the Prudential

2025-08-28
インデックス化した3社比較 ケインズのプロヴィンシャルのためのパフォーマンス評価が続く。ケインズは、3つの生命保険会社(プロヴィンシャル、ナショナル・ミューチュアル、プルデンシャル)のパフォーマンスを、①簿価に対する市場価値の比率(表1)、次に②追加投資(資本の増加)と売買の影響を除いたインデックスの形(表2)で示している。 ②は、ポートフォリオのパフォーマンス評価における時間加重による方法。計算が煩雑になるところで、ケインズは、「わたしの算数に間違えがなければ!」とウィットを効かせて述べている。 市場インデックスを大きく上回る3社、特にプロヴィンシャル 特に、②時間加重インデックスの比較をみると、3保険会社は、インデックスを大きく上回っている。1936年末時点で、プルデンシャル129、ナショナル・ミューチュアル129、プロヴィンシャル137である。これに対して、2つのインデックス...
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ケインズの投資-33 キングス・カレッジとの比較 Keynes’ Investments-33 Comparisons with King’s College

2025-08-27
キングス・カレッジのファンド-II が米国株を含み最もアクティブ 規模がパフォーマンスに影響との示唆 ケインズが関わった、キングス・カレッジ、ナショナル・ミューチュアル、プロヴィンシャルの投資パフォーマンスの比較を行っている。ファンドの規模は、キングス・カレッジ、プロヴィンシャル、ナショナル・ミューチュアルで、1:2.5:10になる。このことは、相対パフォーマンスに影響を与えている、と述べている。 キングス・カレッジには5つのファンドがあり、このうち、最もアクティブに運用しているのが、米国株を含むファンド-II だ。ファンド-II の9年間(1928.9.1-38.1.1)の上昇は、年率約14%。 (以上、KN注) 以下、「プロヴィンシャル保険会社のための覚書 (1938年3月7日)」の続き。 キングス・カレッジとの比較 カレッジには5つの投資ファンドがある。そのうち3つは信...
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ケインズの投資-32 プロヴィンシャルのための覚書38.3.7 Keynes’ Investments-32 Memorandum for the Provincial

2025-08-23
シティでの活動 事後評価-1 事後評価の重要性 下記は、ケインズがプロヴィンシャル保険会社のために書いた覚書 (1938年3月7日付)。これは、投資会社の役員としては、当たり前のことかもしれないが、ケインズは常に自己が関わる投資について事後評価、時価評価を行っていた。この行為自体が投資成果を直接左右するものではないが、常に自らのポジションを定量的に評価することが、次の行動、ひいてはパフォーマンスの向上に繋がると言ってよいだろう。 以下、プロヴィンシャルの役員会のために書いたケインズの覚書。 プロヴィンシャル保険会社のための覚書 (1938年3月7日) 投資結果 I. プロヴィンシャルとナショナル・ミューチュアルの比較 1. 英スターリング普通株 プロヴィンシャルとについては、詳細な統計は1929年初からになる。1937年12月31日に、評価益は取得価額に対して53%になって...
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ケインズの投資-31 美人投票説とバリュー投資 Keynes’ Investments-31 Keynes’ Beauty Contest Theory and Value Investment

2025-08-22
ケインズの美人投票説とバリュー投資の確立 ケインズの経済学と投資活動 投資家としてのケインズは、個人での投資の他に、母校キングスカレッジ、シティではナショナル・ミューチュアル、プロビィンシャルという保険会社の資産運用に役員としてかかわっていた。ケインズの理論的、論理的かつ実践的な経済学には、まぎれもなくケインズの投資家としての経験が反映されていた。 ウォールストリートの美人投票説 ケインズ一般理論における資本市場観、特に株式市場観には、市場の非効率性に関連する言説がある。美人投票説がその典型だが、ウォールストリート、米国株式市場のあり方に対する批判も手厳しい。ケインズ(1983-1946)が活躍したのは20世紀前半だ。 ケインズの「一般理論」とベンジャミン・グラハムの「証券分析」 米国でバリュー投資のバイブルといわれるベンジャミン・グラハムの「証券分析」が出版されたのは1934...
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ケインズの投資-30 45年総選挙の結果(チャーチル敗退)を受けて Keynes’ Investments-10 Upon the result of the General Election of 1945 (the defeat of Churchill)

2025-08-19
追伸 結論は変わらず、むしろ強める つむじ曲がり?の1945年イギリス総選挙 イギリスでは終戦時1945年7月5日に総選挙が行われた。大戦を勝利に導いた保守党のチャーチルが敗れた。労働党が単独過半数の議席を獲得し、労働党党首クレメント・アトリーが首相の座についた。つむじ曲がりのいかにもイギリスらしい結果といえるだろうか? 金融緩和、賃金物価上昇を予測 株式保有増加を示唆 ケインズのこのF.C.スコットへの書簡は、45年7月25日付けだが、以下の追伸で、選挙前に書いたが、選挙結果を待って送付することにした、と記されている。そこでは、当面は不安定な状況があるだろうが、選挙前に書いた結論に変化は無く、むしろ強めるだろうとしている。その第一の理由が、新内閣が、金融緩和に動くだろうから、というものだった。ここでも、ケインズは、物価上昇を予想し、株式の投資を増やすことを示唆している。 【F....
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