ケインズの投資について-11 コモディティー投資-1 Keynes’ Investments-10 Investment in Commodities
コモディティー投資-1
一般理論の利子論、貨幣論の形成に寄与したコモディティーへの投資
ケインズはコモディティーへの投資も積極的に行った。コモディティーへの投機・投資の経験、及びそこから得られた洞察は、ケインズの一般理論に見られる理論形成に多大な影響を与えていると思われる。それは何よりも、貨幣の特性、つまり、一般理論の中核をなす、「流動性プレミアム」のクローズアップにある。そして、その流動性プレミアム(liquidity premium)は、貨幣の歴史の初期において貨幣の役割を果たしたコモディティーとの比較によって、浮き彫りにされているのである。
ケインズの詳細なコモディティー・リサーチ
ケインズは、コモディティーの需給動向に関する詳細なレポートを、1923から30年にかけて作成している。需要と供給は経済学のエッセンス中のエッセンスである。その意味で、ケインズが、他の財と異なり、品質の差がほとんどなく、その意味で需給が、粗野に、直接的に、価格に反映される、コモディティー(商品)に着目したのは、経済学者としては極めて当然ともいえる。しかし、それは同時に、コモディティー投資のために必要な、投資家としてのケインズが生み出したリサーチ・レポートであったとも言える。
コモディティーへの視点が、一般理論の利子論、貨幣論にどのように影響を与えたかの考察については別途述べることにしたい。
以下の書簡は、ケインズが、ケンブリッジの弟子であり、盟友であるR.F.カーンに宛てたもので、コモディティーへの投資について述べている。
R.F.カーンへの手紙(1937年6月30日)
ストラドル取引
私は、ウォルター・ケースに会ったというリディアから小麦、ラード(豚油)についてのレポートを受け取りました。彼は、なおウィニペグ-シカゴのストラドル取引を好んでいるようです。多分、我々の手仕舞いのリミットを20ポイントの利益に上げるのが良いかもしれません。
彼は、当面ラードを好んでおり、綿実油には懐疑的なようで、最終的にはラードを減少させるかもしれません。しかし、綿花の収穫について確かな見通しを得るのは、誰にとっても時期尚早と言えるでしょう。
しかしながら、私は、綿実油を1又は2に対して売却し、ラードを11.75での購入を既に発注しています。綿実油9月限月を1契約[60,000lb]売却し、次にラードを1契約購入することを企図してのことです。
(ケインズは以後数カ月にわたってラードへのスイッチ、入れ替えを継続している。)
From a letter to R.F. Kahn, 30 June 1937
I have reports form Lydia, who has been seeing [Walter] Case, on wheat and lard. He still favours the Winninpeg-Chicago straddle; so perhaps we might raise our limit for closing it to 20 pt gain.
He favours lard for the time being, but distrust cotton oil which may in the end (he thinks) bring down lard; thought it is really much too soon for anyone to have reliable views of the cotton crop.
However I am disposed to job (unhurriedly) from cotton oil to lard at 11.75, with the idea of selling 1 (or 2) cotton oil against it subsequently? And to sell 1 contract [60,000 lb] Sept cotton oil at 9.25, with the idea of buying 1 lard against it subsequently?
By Kota Nakako
2025/04/30