地価公示から見た常盤台住宅地の景観プレミアムーアナリストの視点

中湖 康太

常盤台住宅地の景観プレミアム

平成30年の地価公示[1]から常盤台住宅地の景観プレミアムについて見てみたいと思います。常盤台住宅地の中には標準地が1つあります(板橋-3)。この標準地は常盤台の最大の魅力の一つであるプロムナード沿いではないのですが、南6.0メートルの道路(区道)に接したときわ台駅北口から440メートル(徒歩6分程)、地積287㎡、約87坪程の常盤台2丁目の土地です。用途地域は第一種低層住居専用地域で建ぺい率50%、容積率100%(以下、50-100のように記述します)です。10メートルの高さ制限があります。公示価格は552,000円/㎡です。

周辺住宅地との比較

比較すべき常盤台住宅地に隣接する周辺の住宅地・標準地として、板橋-2(第1種中高層住居専用地域、60-200)、板橋-16(第1種住居地域、60-200)、板橋-39(同、60-200)があります。[1]これら標準地は指定容積率を満たせる条件を備えています。

公示価格は、板橋-2が377,000円/㎡、板橋-16が479,000円/㎡、板橋-39が400,000円/㎡、また、板橋区住宅地平均[2]は391,800円/㎡です。常盤台住宅地は、板橋-2に対して46.4、板橋-16に対して15.2%、板橋-39に対して38.0%、板橋区住宅地平均に対して40.9%高くなっています。これは常盤台住宅地の景観プレミアムと言えるかもしれません。

鑑定評価書でのコメント

地価公示には2人の不動産鑑定士による評価書が添付されています(①、②と記します)。そこには、常盤台住宅地の市場の特性と価格(鑑定評価額)を決定した理由が記されています。参考までにこれらを見てみましょう。

市場の特性①

同一需給圏[3]は主として、板橋区、練馬区内の東武東上線沿線の最寄駅から徒歩圏の住宅地域。需要者の中心は、両区内 に居住する高所得者層や地元開発業者等であるが、東武東上線沿線随一の優良住宅地であることからステイタス性もあるため、同一需給圏外からの購入者も見られる。また地域周辺においては更地を購入し注文住宅を建築するという需要者が多く建売住宅は相対に少ないため、画地規模の大きな1億5千万円程度までの更地取引が比較的多く見受けられる。

市場の特性②

同一需給圏は、主に東武東上線ときわ台駅を中心に同線各駅から徒歩圏内の住宅地域の存する圏域である。主たる需要者は地縁的選好性を有する近隣居住者のみならず、良好な居住環境を求める高所得者層が中心となる。名声が認められる住宅地域であることからステータスシンボルとしての取引も認められる。居住用不動産に対する需要は堅調に推移し ており、需要の中心は、250㎡程度の戸建住宅用地で13000万円から16000万円程度である。

試算価格の調整 ・検証及び鑑定評価額の決定の理由①

周辺の取引は住宅地としての市場性を具現した自己使用目的の取引が中心で、信頼性の高い取引事例を多数収集しえた。一方、地域にはアパートも見られるが、容積率が低いこともあり収益性に着目した取引は皆無といえ、価格形成過程 において収益性は意味をなさず、相対に収益価格は低位となったものと思料する。したがって、比準価格[4]を採用し収益価格[5]は参考に留め、鑑定評価額を上記のとおり決定した。

試算価格の調整 ・検証及び鑑定評価額の決定の理由②

近隣地域は戸建住宅を中心とする居住環境の良好な住宅地域であり、居住の快適性やステータスシンボルとしての機能に着目して取引が行われることから、土地価格水準に見合うだけの賃料の収受は困難であり、ゆえに収益価格は低位に 試算された。以上より、市場の取引実態を反映した比準価格を採用し、収益価格を参考にして、鑑定評価額を上記のとおり決定した。

 

田園調布、成城との比較

このような常盤台住宅地ですが、田園調布住宅地の4つの標準地(大田-4、20、30、36;第一種低層住居専用地域)の公示価格平均は795,250円/㎡(601,000円/㎡〜1,070,000円/㎡)であり、常盤台住宅地に対して44.0%高くなっています。

大田区住宅地平均501,700円/㎡は、板橋区住宅地平均より28.1%高いので、44.0%のうち28.1%は地域性(区の違い)によって説明できるかもしれません。残りの15.9%ポイントは知名度、名声の差であり、さらに景観の違いが含まれているかもしれません。

田園調布の全国知名度、名声は圧倒的:大田区内でも際立つ

ちなみに、大田区田園調布住宅地平均は大田区住宅地平均の501,700円/㎡に対して51.3%高くなっており[2]、田園調布の知名度、名声、景観は大田区の中でも秀でているということが言えます。特にその全国的な知名度、名声は圧倒的なものがあります。

成城との差は主として地域性

成城住宅地の3つの標準地(世田谷-16、39、89;第一種低層住居専用地域)の公示価格平均は706,000円/㎡(820,000円/㎡〜622,000円/㎡)で、常盤台住宅地より27.9%高くなっています。

世田谷区住宅地平均は589,300円/㎡で、板橋区住宅地平均より50.4%高くなっています。したがって、成城住宅地と常盤台住宅地の差はほとんど地域性(区の違い)で説明が可能かもしれません。世田谷区は区全体で住宅地としての魅力をセールスポントとしていますので、住宅地としての名声、イメージ、人気度が高いと言えます。

地価が高いから良い住宅地とは言えない

以上は地価公示を使った試験的な考察です。但し、地価が高いからより優れた住宅地であるとは言えません。言うまでもなく、街にはそれぞれ個性、特徴があり、それを作ってきた先人の、そして住民の、関係者の足跡が刻まれており、また地縁が重要なファクターになるでしょう。住宅地は生活の場であり、個々人、また家族、地域住民コミュニティが何を重視するかでその在り方は異なってきます。

あくまで実体を見極める

また、いわゆる高級住宅地には多分に、顕示的な所有、いわば見せるための、ステータスを示すための所有という要素が含まれているでしょう。つまり、実体とは別に、価格が高いほど良いという需要、ぜいたく財としての側面があります。個人的にはこれはあまり適切であるとは思いません。あくまでも実体を見極めていく、ということが重要であると考えます。いずれにしても、個々人、また家族が、コミュニティとしての地域住民がそこから得る満足度、効用がポイントになるということになるでしょう。

相対的に割安な常盤台住宅地:アナリストの視点

常盤台住宅地は、これまで述べてきたように質的・量的にすぐれた「優美」ともいわれるアーバンデザインを持つ住宅地として専門家の評価が極めて高い住宅地です。

常盤台住宅地のガイドライン123㎡(37.3坪)により、新たに購入する場合、最低でも土地に約7,000万円超(手数料等含む、地価公示ベース)、建物の坪単価を100万円(付帯工事、消費税含む)とすれば3,700万円程度、最低でも計1億円超の資金が必要になります。鑑定評価書では、土地だけで13,000〜16,000万円の取引が中心になっているとありますので、70〜90坪規模で土地が売買されていることになります。

これは、戦前の郊外住宅地がターゲットとした中産階級サラリーマン、今日のそれにとっては低いハードルとは言えないでしょう。しかし、田園調布、成城に比べれば割安であることも言えるわけです。

勿論どの住宅地に住むかは、どこに生まれ育ったか、馴染みがあるか等、地縁であり、また個人、家族の価値観、好みによって決ってくるでしょう。

アナリストの視点からすれば、高い都心への至近性(環七沿い)、利便性を持ち、景観に優れたこのグレードの住宅地としては相対的に割安であると言えます。但し、これはひとつのオピニオンであり、また私自身、常盤台住宅地に地縁をもっており、その点は割り引いていただく必要があることを付け加えたいと思います。

高い地価のリスク

地価が高すぎるということは、固定資産税が高い、需要者が限定されてくる、相続時の問題がより深刻である等々の問題があります。ぜいたく品にありがちな買値は高いが売値は低いというリスクをはらんでいることにも注意が必要です。相続や事業上その他の理由により資金化、現金化の必要上、売り急ぐ場合、このリスクは特に高くなります。この点については別途述べたいと思います。

比較を通してより良い景観、街づくりに生かす

ここでの考察は、あくまで公示価格による比較を通して、今後の住宅地としての魅力、景観の維持・向上、より良い街づくりの参考とすることが目的です。

以上

2018/5/12

© kota nakako, gcs

[1]  国土交通省 標準地・基準地検索システム ttp://www.land.mlit.go.jp/webland/index.htm

[2]  東京都財務局 地価公示価格(東京都分) http://www.zaimu.metro.tokyo.jp/kijunchi/30kouji/index.html

[3]  わかりやすく言えば、ある不動産(土地)を購入しようとする人(需要者)が、比較対象とする不動産が存在する範囲。正確には「一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域」(鑑定評価基準)

[4] 市場での取引価格をもとに試算した価格。取引事例比較法によって求められた価格のこと。

[5] 不動産の収益力をもとに試算した価格。収益還元法によって求められた価格のこと。

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