‘経済学古典を歩く Walking Economics Classics’ カテゴリ

保護中: 投資家ケインズ-8 Investor Keynes

2023-05-11
ケインズの投資の三原則 ケインズの一般理論において示された、株式投資のあり方は、「イールドに着目した長期投資」であった。しかし、ケインズの投資スタイルは、バイアンドホールド(買持ち)ではなかった。キャピタルゲインも積極的に取りにいく活発なもので、時に人が投機とも表現する短期的な売買も行っている。ここに、ギャップがあるのだが、これは一般理論が経済理論の書であるためであろう。イールド=投資収益率は、初期投資に対して、インカムゲインをキャピタルゲインから算出される。つまり、ケインズが「イールド」というとき、そこにはインカムゲインとキャピタルゲインも含まれている。そうすることで、一般理論の表現とケインズの現実の投資行動は合致する。 投資の三原則 ケインズの株式投資の原則を直截に知るには、友人、シティ関係者などへの書簡、覚書きを見るのが適当だ。ケインズのキングスカレッジのエステート委員会への覚...
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投資家ケインズ-7 Investor Keynes

2023-05-06
ケインズの累積投資収益 ケインズの投資収益の累積を分野別にみてみよう。Table-4に示されたケインズの投資活動は1920年から1945年の25年におよぶので貨幣の時間的価値を考慮する必要がある。これについては、これまで同様、便宜上Currency converter: 1270–2017 (nationalarchives.gov.uk)により、ポンドの現在価値(2017年)に換算した(下図; 購買価値ベース概算)。 証券投資からの収益が全体の84% 為替、商品15% ケインズの投資による資産形成において最も貢献したのは、証券投資であり、累積の投資収益の約84%に及んでいる。全体の内訳は、①ポンドキャピタルゲイン35%、②ポンド配当30%、③ドルキャピタルゲイン13%、④ドル配当6%、⑤商品11%、⑥為替4%、⑦その他1%。 インカム重視の投資を良しとし、一般理論において、美...
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保護中: 投資家ケインズ-6 Investor Keynes

2023-04-25
ケインズの投資活動 ー 分野別にみる ケインズの投資活動を、分野別(所得源泉別)に明らかにしたTable4(CWJMK-XII, 'Keynes as an investor')に従ってみてみよう。 なお、わかりやすさのため、Currency converter: 1270–2017; nationalarchives.gov.uk に基づき、ポンドの現在価値(2017年時点)に換算し、さらに2017年の平均ポンド円換算レート(145円)により円換算(2017時点)して、文中適宜示す(#)ことにする。 当初は為替の投資(投機)で大きな損失 1920年は、配当所得£815を得たのに対して、証券投資(£)で£602の損失、為替で£10,632(#4,480万円)の大きな損失を被った(ネットで£10,418の損失)。ケインズの実質的な投資家としてのスタートは必ずしも順調ではなかった。しか...
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投資家ケインズ-5 Investor Keynes

2023-04-17
アクティブな投資家 レバレッジ(借入)も使い活発に売買 ケインズは、「一般理論」でインカムを重視した長期投資の重要性を説いた。しかし、それは決してバイ・アンド・ホールド、買持ち(買ったら値動きに関係なく持ち続ける)という投資スタンスではない。実際のところ、ケインズは、レバレッジ(借入)も利用し、活発な売買を行う極めてアクティブな投資家であった。 最初の投資は22才、経済学の勉強を始めた年 ケインズが投資を開始したのは、1902年(19才)イートン卒業後、ケンブリッジ・キングス・カレッジに入学、経済学に興味を持ち、勉強を始めた1905年22才の時だと言われている。最初の投資は、Marine Insurance Companyの4株の購入だった。その6か月後エンジニアリング会社Mather and Plattの4株を購入した。1906年にケインズはインド省に入る。その後、仕事と確率論な...
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保護中: 投資家ケインズ-4 Investor Keynes

2023-03-22
美人投票説と長期投資 ケインズは一般理論で、株式市場を美人コンテストの投票に例えた。つまり、株式市場は、各人が自分が最も美人だと思う人に投票するのではなく、他の投票者が投票するだろう人に投票する、平均的意見がどうなのかに知性をふりしぼって予想する場であると辛辣に言う。 「ここでメタファーをやや変えていうならば、プロフェッショナルな投資は投票者(競争者)が100の写真から6人の美人を選ぶ新聞のコンテストに例えられる。賞は、全体の投票者が最も多く投票した女性を選んだ人に与えられる。各投票者が自分が最も美人だと思う人を選ぶのではなく、他の投票者が最も投票するであろう女性を選ぶのである。そして他の投票者も同じ観点から投票する。つまり、自らの判断で最も美しい人を選ぶのではないだけでなく、平均的意見により最も美人だとする女性を選ぶことでもないことになる。つまり、われわれの全インテリジェンスは、平均...
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投資家ケインズ-3 Investor Keynes

2023-03-15
流動性選好 - 貨幣への投機的需要 ケインズは、一般理論で流動性選好(貨幣への投機的需要)を明らかにした。いわば貨幣を財サービスの取引のためではなく、資産として、貨幣を保有するものだ。 安全資産としての貨幣 株式や債券などのリスク資産の市場が極めて不安定で、先行きが見通せないとき、強気なマーケットだったとしてもバリュエーション(株価評価)が高い時がある。そのようなとき、安全資産(リスクフリーアセット)として、貨幣の保有を増やす、貨幣を需要することがある。そして安全資産としての貨幣の出し入れは、投資の、資産運用の重要なポイントのひとつだ。 国債は安全資産ではない ポートフォリオ理論では、安全資産として国債があげられることが多い。しかし、仮にデフォルトリスクがないとしても、長期国債には価格変動リスクがある(長期金利が上昇すると債券価格が下落)。とてもリスクフリーとはいえない。したがっ...
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保護中: 投資家ケインズ-2 Investor Keynes

2023-03-11
長期的収益、利回り(イールド)に着目した株式投資 ケインズは、一般理論で、「長期的には我々は皆、死んでいる」(“In the long run we are all dead.”)と言った。しかし、自身の人生では、株式の長期投資で成功し、また長期的収益、利回り(イールド)に基づく投資の重要性を説いた。 ケインズは、有名な美人投票のメタファーに示されるように(特に米国の)株式市場の株価形成を批判しつつ、長期的収益に基づいた投資の重要性を一般理論で次のように述べる。もっとも、これは、平均的な個人投資に対して、本来あるべき投資スタンスが期待されるプロフェッショナルな投資家の行動様式を批判する中で述べられているので単刀直入ではない。 「しかし、注目すべきひとつの特徴がある。平均的な個人を超える判断力と知識をもった熟練したプロフェッショナル、専門家の間には競争がある。しかし、彼らのエネルギーと...
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投資家ケインズ -1 Investor Keynes

2023-03-05
一般理論は投資のバイブル ケインズの一般理論("The General Theory of Employment, Interest and Money")は、わたしにとって証券投資のバイブルである。ケインズは有効需要の原理に基づくマクロ経済学の創始者といわれている。しかし、それは同時に精緻なミクロ理論に基づいている。古典派経済学が暗黙としていた賃金の理論を明らか示したのはケインズである。古典派の均衡理論はスペシャルケースであるとして、不完全雇用均衡のモデルを提示した。ケインズの現実経済への接近は、直感的、実践的であると同時に合理的、理論的なものであり実に迫力に満ちている。それは今日の行動経済学の先駆ともいえる。そのすごさはどこからくるのか? 投資家ケインズなくして経済学者ケインズなし それはケインズが、経済学者であると同時に投資家であったことからくる、とわたしは思っている。投資家ケ...
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短歌で読むケインズ「一般理論」-6-s-9 Reading Keynes’s ‘General Theory’ by Tanka-6-s-9

2022-03-30
短歌で読むケインズ「一般理論」-6-s-9 Reading Keynes’s ‘General Theory’ by Tanka-6-s-9 – 株式会社ゼネラル・カラー・サービス 中湖康太 経済文化コラム (general-cs.tokyo)...
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短歌で読むケインズ「一般理論」-6-s-8 Reading Keynes’s ‘General Theory’ by Tanka-6-s-8

2022-03-28
短歌で読むケインズ「一般理論」-6-s-8 Reading Keynes's 'General Theory' by Tanka-6-s-8 今日の 使用者費用は 不況期の 設備稼働の 機会費用なり (下記KN注参照) It will be more when it is expected that a more than normal yield can be obtained at some later date, which, however, is not expected to last long enough to justify (or give time for) the production of new equipment. Today's user cost is equal to the maximum of the discounted values ...
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