リカード「経済学原理」を歩く-61 利益-2

中湖 康太

土地の等級別の限界生産力格差によって、差額地代が発生する。それが、地主の分配率を高める。但し、労働(投入量)を価値の唯一の源泉とする

【コメント】リカードはその分配論を展開する。社会の進歩に伴い、生産物の生産量が増えるにしたがい、地主、労働者、農業者の持分価値が増加する。しかし、分配においては地主の配分は増加するが、労働者、農業者のそれは減少するとする。

これをどう解すべきか。リカードは投下された労働を価値としている。資本の蓄積が進み、労働生産性は上昇し、生産量は増えていく。生産量の増加に伴い、労働需要が増え、賃金が上昇すると、労働が供給される(人口増)。したがって、価値の総額は増加する。ただし、労働供給(それは労働需要量にも等しくなるのだが)は、賃金が生存可能水準になった時に止まる。

確認になるが、価値の裏付けはあくまで労働である。一方、生産量が拡大するにしたがって、順次、限界地が耕作されていく。それに伴い、差額地代が発生する。地主の生産物(量)の持分は増加する。

リカードにおける生産量の拡大に伴う、労働需要の増加は、摩擦的(frictional)であるように見える。つまり、資本の蓄積による労働生産性の上昇は、生産量を増加させる。その限りにおいては労働需要(供給)は増えないはずである。なぜなら、生産量の増加は、労働生産性の上昇によってもたらされるからである。となれば生産量は増えるが価値の総額は増えないとなるはずである。しかし、摩擦的に、労働需要が増加し、賃金が上昇する。そこに労働供給(人口)増が生じる。その人口増も賃金が生存可水準(subsistence level)になるに及んで止まる。

一方、土地については、土地の等級間の限界生産力の格差によって、劣等級の土地が順次耕作されていく。その格差が差額地代である。その差額地代分が地主の生産量の持分割合の増となるわけであろう。

 

(訳)
もし製造業者と農業者が10人を雇い、賃金が24ポンドから25ポンドに上昇したとする。するとそれぞれは240ポンドの代わりに250ポンドを払うことになる。これは、製造業者が同量の商品を得るために支払われるものだが、農業者は新しい土地で新たに雇わなければならないため、追加的に25ポンドの賃金を払う。古い土地の農業者は、まったく同様の25ポンドを地代として支払わなければならない。その追加的な労働者がなければ穀物は生産されないからだ。したがって製造業者は賃金275ポンドを支払う必要があり、農業者は賃金と地代を併せて275ポンドを支払う必要がある。この追加的な25ポンドの支出に対して、生産者は生産物価格の増加によって補うことができる。したがって、生産者の利益は製造業者の利益に等しくなる。この原則は重要なものなので、さらに説明したい。

社会の初期段階においては、地主にとっても、労働者にとって、土壌からもたらされる生産物の持分価値はとても小さかった。それは富の蓄積にしたがって、また食物生産の困難さが増すにしたがって増加する。労働者の持分価値自体は、食物価値が高くなるに伴って増加するだろうが、その実質的な配分の割合は減るだろう。一方、地主の持分価値は増すばかりでなく、量(配分)も増加するだろう。土地の生産物の残りの量(配分)は、地主と労働者が対価を支払われた後、必然的に農業者に帰属し、利益の蓄積となる。しかし、社会が進歩しても、全ての生産物の農業者の割合は、減少する。但し、価値は増加するだろう。その点においては地主と労働者と同様である。

If both the manufacturer and farmer employed ten men, on wages rising from 24l. to 25l. per annum. per man, the whole sum paid by each would be 250l. instead of 240l. This is, however, the whole addition that would be paid by the manufacturer to obtain the same quantity of commodities; but the farmer on new land would probably be obliged to employ an additional man, and therefore to pay an additional sum of 25l. for wages; and the farmer on the old land would be obliged to pay precisely the same additional sum of 25l. for rent; without which additional labour, corn would not have risen. One will therefore have to pay 275l. for wages alone, the other, for wages and rent together; each 25l. more than the manufacturer: for this latter 25l. they are compensated by the addition to the price of raw produce, and therefore their profits still conform to the profits of the manufacturer. As this proposition is important, I will endeavour still further to elucidate it.

We have shewn that in early stage of society, both the landlord’s and the labourer’s share of the value of the produce of the earth, would be but small; and that it would increase in proportion to the progress of wealth, and the difficulty of procuring food. We have shewn too, that although the value of the labourer’s portion will be increased by the high value of food, his real share will be diminished; whilst that of the landlord will not only be raised in value, but will also be increased in quantity. The remaining quantity of the produce of the land, after the landlord and labourer are paid, necessarily belongs to the farmer, and constitutes the profits of his stock. But it may be alleged, that though as society advances, his proportion of the whole produce will be diminished, yet as it will rise in value, he, as well as the landlord and labourer, may, notwithstanding, receive a greater value.

Kota Nakako

2019/02/24

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