バリュー投資入門(10)バフェット2008(2)総括2

中湖 康太

バフェットの2008年の総括は続く。

まず私見を述べよう。

何を買うか以上に重要な、なぜ買わないか、どのくらい買わないか

バフェットが株式市場の暴落、危機をむしろ買いの機会としてとらえていることは当然である。より重要なのは、そのような状況で買う資金を用意していることである。

バフェットのバリュー投資で重要なのは、勿論何を買うかであるが、それ以上に重要なのは、市場暴落時に買う資金を準備していること、資本配分であるといって良いだろう。

貨幣への投機的需要

つまり、市場が要求するリターンを提供しつつ(これは端的には十分に高いROEであると言って良いだろう)、一方で短期的にはそれを低める作用もある流動性 – これこそがケインズが貨幣への投機的需要といったものと言ってよいだろう – を準備していることである。

この妙なるポジション、資本配分こそ、バリューを考え抜いた事業、投資に共通する銘柄選択と共に、バフェットのバリュー投資の極意といえるであろう。

経済においては賢明さは愚劣さの裏返し

しかし、ケインズに言わせればこのような貨幣への投機的需要こそ、実は市場暴落の重大な要因のひとつである。経済においては賢明さと愚劣さが同じコインの表裏なのである。

以下は、バフェットの言葉の中湖抄訳。

バフェットの2008年の総括 (2)

経済の落ち込みの影響

2008年にバークシャーの事業群は悪い経済の影響を受け本来の力を発揮できなかった。それは2009年も続くだろう。小売事業は住宅建設に関連しているため特に打撃を受けた。

むしろ競争的地位を高めた

しかし、総じて言うと、我々の製造業、サービス、小売り事業はかなりの額を稼ぎ、ほとんどの事業、特に大規模なものは、その競争的地位を高めた。

経済の悪影響を受けなかった保険とユーティリティ

さらに幸運なことにバークシャーの重要な2大事業である保険とユーティリティは一般経済とは相関していない利益を稼ぎだした。この2事業は2008年に際立った結果を残したし、2009年の見通しも良い。

保険事業

昨年のレポートで予想したように、2007年には引き受け関連の特別利益があったため、2008年は減益となった。しかし、保険事業は6年連続で引受利益を稼いだ。つまり、我々の58億ドルの保険の”フロート”は、我々の所有でないけれども、我々が保有することができ、我々のために投資することができる。つまり、我々の負担するコストはゼロ以下である。実際、我々はフロートの保有により2008年に28億ドルの支払いをうけた。チャーリーも私はとても愉快に思っている。

時が経つにつれて、ほとんどの保険会社は大きな引受損失を被るだろう。というのも彼らの保険事業のエコノミックスは我々のものとは異なっているからである。勿論、我々も引受損失をだすことはあるだろう。しかし、我々は保険事業でベストのマネージャー群を持っている。ほとんどの場合、塹壕に守られた価値あるフランチャイズを監督している。この強味を考えると、我々は引き続き引受利益を稼ぐだろうし、したがって、我々はフロートを保有することで何のコストも負担しない。保険事業はバークシャーのコア事業であり、経済的なパワーハウスなのである。

ユーティリティ事業

チャーリーも私も同様にユーティリティ事業を重視している。昨年には過去最高利益を記録したし、今後も利益を稼ぎ出すだろう。同事業を経営するデーブ・ソコルとグレッグ・アベルはユーティリティ事業において他の追随を許さない結果をあげている。この資本集約的事業においては、新規プロジェクトは大規模なものになる。しかし、彼らが新しいプロジェクトを持ち込むのをいつもうれしく思っている。このようなプロジェクトはバークシャーに大規模な投資の機会を提供すると同時に、きちんとした利益を稼ぎ出してくれるのである。

 

投資に当たっては、マーケットのペシミズム(悲観)は友達であり、ユーフォリア(楽観)は敵である (“When investing, pessimism is your friend, euphoria the enemy.”)

資本のアロケーション(配分)

昨年は資本配分においてはうまくいった。バークシャーはいつも事業と有価証券の買い手であるが、資本市場が落ち込んだ時は、特に我々にとっては追い風となる。

保険のポートフォリオにおいて、我々は通常の市場では行えないであろう条件で3つの大きな投資を行った。これらはバークシャーに税引前で15億ドルの利益を稼ぎだすだろう。我々はMarmonを買収した。我々は同社の64%を保有し、向う6年間で残りの株を購入する。追加的に我々の子会社は競争的地位と収益力を強化する買収を行った。

しくじり(失敗)

これらは良いニュースである。しかし、好ましくない現実もある。2008年に私はいくつかの愚かな投資を行った。一つは手数料に関わる大きな失敗であり、その他いくつかの痛い失敗を犯した。これらについては後述する。さらに私はいくつかの投資をしそこなった。新たな事実が明らかになるにしたがって、再検討し、速やかに行動すべきところを、躊躇してしまったのである。

追加的に、我々が保有する債券と株式の市場価値は、市場全体の下落と共に著しく下落した。しかし、これはチャーリーにも私にも悩みにはならない。我々のポジションを高める資金を有しているならば、このような価格の下落は我々にとって絶好の買いのチャンスである。ベン・グレアムは言った。

「君が払うものは価格(対価)。君が得るものは価値」“Price is what you pay; value is what you get.” (Ben Graham)

靴下であれ、株であれ、良い品が値引きされれば買うチャンスなのである。

2018/10/5

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