先端的金融IT(SAJ May.2019を読む)

中湖 康太

証券アナリストジャーナル2019年5月号に特集「先端的金融IT技術の応用」が掲載されている。

SAJでは、先端的金融IT技術の定義について触れていないが、フィンテック(Fintech)に含まれるものと考えて良いだろう。

興味深い4点

本特集で興味深かったことは以下の4点である。

1.個人向けの投資アドバイスで、「富裕層は人のサービスを好む」傾向がある、と述べられていること。

2.定性情報の定量化技術により、ESG格付けの予測など、投資家向けのサービスとして提供される可能性があること。

3.呼び値の刻みの水準が、取引市場間の競争に影響を与えること。

4.人間の定性判断の定量モデル化が試みられていること。

それぞれについてコメントしよう。

ITが進化するほど、重要になる人間によるサポート

1.については、現在の富裕者層はシニア世代であり、ITリタラシーが低いことも関係しているだろう。しかし、いくらITが発達しても、すべてがITでソリューションが提供されるわけではない。例えば、カスタマーサポートについても、すべてITで処理しようとすることはアンフレンドリーであり、不親切である、とわたしも感じる。やはり、電話での対応も含めインタラクティブなサポートが、ポイントで必要になるだろう。それを適切に行う企業がやはり勝ち組になるのではないかと思う。

要は、ITで対処すべきところはITでする。人間がすべきところは人間がする、このメリハリが重要だろう。

定性情報の定量化

2.定性情報を、定量化することは非常に重要だ。ESGについても、ある企業がそれを重視していても、全体のなかでの位置づけが不明だと、投資判断には役に立たないかもしれないからだ。

ただし、客観的な基準が明確にされる必要があるだろう。例えば、住みたい街ランキング、というような情報はどこまで客観性があるのか不明な場合がある。そのランキングが逆フィードバックを生じ、需要、価格に影響を与えていることもある。

流動性は市場の生命性

3.呼び値の刻みが、取引所のシェア、つまり競争力に作用というのは、市場の流動性に影響するからだろう。取引所が最大の魅力のひとつは流動性にあるといってよいからだ。

人間にしかできないことにフォーカスすることが生産性を飛躍的に高める

4.機械が得意なのは、目的が単一かつ明確で、判断の理由が求められない問題であり、一方、不得意なのは、目的が複数かつあいまいで、判断の理由が必要な問題だ、との指摘がある。人間の脳は複雑ネットワークであるという。

勘とか、インスピレーション、イマジネーションといわれるところは人間ならではのものと考えられてきた。

ITが人間に取って代わるという発想ではなく、人間がしていることのうちITができるところはITに、人間は人間にしかできないことにフォーカスするという発想が重要だろう。それによって生産性は飛躍的に高まるだろう。

 

Kota Nakako

5/8/2019

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