Notes on Ricardo’s Principles (43) – 鉱山の地代 2

中湖 康太

価値の基準としての貴金属

リカードは、ここで価値の基準としての基金属について述べる。貴金属の価値も他の商品同様、本質的には価値の変動を受けるとしている。但し、後述では、(アメリカの発見、そしてその豊富な鉱山の発見により、明らかにその変化は変化を受けているとしても)他の商品に比べて相対的に小さいとし、従って、価値の基準として適当であると、結論している。ここで、筆者はむしろ冒頭の、本質的には、その価値は変動している、と述べているリカードの主張を重視すべきと考える。筆者は、金、銀は、価値の基準としては「野蛮な遺物」(“barbaric relic”)であるとするケインズの見方が、今日においてより適切であるという立場をとりたい。リカードもまた、本質において金、銀の価値は変動する、としている点がリカードの本質的な主張であると考える。しかし、だとしても、他の商品に比べればその変動は相対的に小さく、従って価値の基準として、その媒介としての価値に変化は無い、と仮定しよう、という立場をとっているのである。それは、リカードが生きた時代の経済状況、経済の発展段階を反映しているといえる。本質を論じるリカードと、現実に応じた判断をするリカードの2つ顔があるといえる。

「他の商品と同じように、貴金属の価値も変化する。採掘に用いられる道具や機械の改良がなされ、労働が大幅に節約できるようになるかもしれないし、同量の労働で、より生産性の高い鉱山が発見されるかもしれない。いずれの場合も、貴金属の価値は下落し、他の財との交換比率も減少する。一方、より深い鉱脈を採掘しなければならない場合や、水が貯まる、その他の偶発事象による貴金属の採掘の困難化は、他の財と比べ、その貴金属の価値を大きく高めるかもしれない。」

Like every other commodity, the value of the metals is subject to variation. Improvements may be made in the implements and machinery used in mining, which may considerably abridge labor; new and more producitve mines may be discovered, in which, with same labor, more metal may be obtained; or the facilities of bringing it to market may be increased. In either of these cases the metals would fall in value, and would therefore exchange for a less quantity of other things. On the other hand, from the increasing difficulty of obtaining the metal, occasioned by the greater depth at which the mine must be worked, and the accumulation of water, or any other contingency, its value compared with that of other things might be considerably increased.

「しかし、正当に観察されるように、どんなに1国の硬貨が決められた基準に準拠していても、金貨や銀貨は、一時的にだけでなく、恒常的に、価値の変動を受けるだろう。それは、他の商品と同様である。」

It has therefore been justly observed that however honestly the coin of a country may conform to its standard, money made of gold and silver is still liable to fluctuations in value, not only to accidental and temporary, but to permanent and natural variations, in the same manner as other commodities.

アメリカとその豊かな鉱山の発見

リカードは、貴金属の価値は変化する、しかし、その程度は相対的に小さく、したがって、貴金属は価値の媒介としても現実的な不都合は小さい、とする。

「アメリカ大陸とその豊かな鉱山の発見により、貴金属の自然価格は大きな影響を受けることになった。この影響は、まだ終わっていない、と多くの人々が思っている。しかし、アメリカの発見による貴金属価値への影響は、終了して久しい、と言って良く、それは、鉱業採掘技術の進歩によるところが大きいのである。」

By the discovery of America, and the rich mines in which it abounds, a very great effect was produced on the natural price of the precious metals. This effect is by many supposed not yet to have terminated. It is probable, however, that all the effects on the value of the metals resulting from the discovery of America have long ceased; and if any fall has of late years taken place in their value, it is to be attributed to improvements in the mode of working of working the mines.

本質論と現実論; リカードの2つの顔

リカードは、価値の媒介として貴金属の価値は変化する。しかし、その変化は現実的には無視しうる程小さいであろう、したがって、価値の媒介としては変化していない、と仮定しよう、という立場をとるのである。繰り返しになるが、本質論と、当時の経済状況をふまえた現実的な判断、現実論の2つがある、といって良いだろう。

「どのような原因でそれが生じているかにせよ、その影響は非常に遅く、緩慢なものであり、一般的な価値の媒介尺度としての金や銀に、現実的な不都合はほとんど生じていない、と言ってよいであろう価値の尺度としては、間違いなく変化している訳であるが、恐らく、金や銀は、他の商品に比べてより変動が少ない、と言えるだろう。このような貴金属が持つ堅さ、可鍛性、分割可能性等の優位性により、貴金属は、文明諸国の価値の基準となる貨幣としての属性を有していると言えるだろう。」

From whatever cause it may have proceeded, the effect has been so slow and gradual that little practical inconvenience has been felt from gold and silver being the general medium in which the value of all other things is estimated. Though undoubtedly a variable measure of value, there is probably no commodity subject to fewer variations. This and the other advantages which these metals possess, such as their hardness, their malleability, their divisibility, and many more, have justly secured the preference everywhere given to them as a standard for the money of civilized countries.

「もし、固定資本を所与として、同量の労働が投入され、地代が発生せずに、同量の金がいつも採掘されるとしたら、自然がもたらすものとして、金はほとんど変化の無い価値の基準になる、と言ってよいだろう。その量は需要に応じて増加するであろう。しかし、その価値は変化が無く、他の財の価値の変化を測る尺度として適しているといえるだろう。前述したように(また、次章でも引き続き述べるように)、金はこのような天賦の一律性、均一性を持っていると言ってよいだろう。価値の変化について語る時、その変化は商品に生じているのであり、その変化を測る価値の媒介に生じているのではない、と見なすこととしよう。」

If equal quantities of labor, with equal quantities of fixed capital, could at all times obtain from that mine which paid no rent equal quantities of gold, gold would be as nearly an invariable measure of value as we could in the nature of things possess. The quantity indeed would enlarge with the demand, but its value would be invariable, and it would be eminently well calculated to measure the varying value of all other things. I have already in a former part of this work considered gold as endowed with this uniformity, and in the following chapter I shall continue the supposition. In speaking therefore of varying price, the variation will be always considered as being in the commodity, and never in the medium in which it is estimated.
 
(2015.10)

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