証券アナリストジャーナルJAN.2018特集「多様化するESG投資」読む

中湖 康太

証券アナリストジャーナルJAN.2018 特集「多様化するESG投資」を読む

(SAJバックナンバーになります)

ESG投資とは

ESGというのは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略です。ESG投資というのは、ESGを重視し、それらを実践している企業を対象に投資することです。

経済の外部性に配慮する「利他の経済学」に通じる

ESG投資[1]は、拙著「利他の経済学」で示した「利他=社会全体の利益最大化」に通じる投資行動です。もともと人類は、地球環境という外部経済に対価を払わずに経済的発展、社会的発展を遂げてきました。しかし、今日、地球環境問題に代表されるように、そこには大きな環境コスト、社会的コストがかかっていたのだ、ということを知るにいたりました。

証券アナリストジャーナル(SAJ)では4つの論文を掲載しており、「多様化するESG投資」の現状と課題を垣間見ることができます。

効果の測定が難しい

ESG投資は、ESGスクリーニングがパフォーマンスの向上にかならずしもつながっていないとする実証分析が多い、ESGファクターをポートフォリオにどの程度反映させているのか、またその効果の測定が困難であること[2]、そもそも効果が漢方薬的である[3]といった課題があげられています。

アナウンスメント効果

ESG投資のためには、長期的な視点が必要なこと[4]、CSV(Creating Shared Value)との関連で中長期的な企業価値増大に直結するESG項目を特定した上で投資判断に反映させることが重要となる[5]、ESG指数への投資を宣言する「アナウンスメント効果」の活用が有用となる可能性がある[6]、といった指摘があります。

行動(Action)が重要

ESGといのは、環境問題に代表されるような経済の外部性に関連していますから、短期的・直接的に効果の測定が難しい面があることは確かです。しかし、企業、また投資家がESGに基づく行動を開始しているということは非常に重要であり、ポジティブな動きであると言えます。

ESG投資を開始したGPIF

世界最大規模の機関投資家である日本の年金積立金管理運用独立法人(GPIF)は、昨年7月に、日本株の3つのESG指数に連動したパッシブ運用を開始したことを発表しました。3つの指数とは、①FTSE Blossom Japan Index、②MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数、③MSCI 日本株女性活躍指数(愛称WIN)です。

GPIFは公表文の中で、「環境(E、Environment)・社会(S、Social)・ガバナンス(G、Governance)の要素に配慮した投資は、期間が長期にわたるほどリスク調整後のリターンを改善する効果が期待されます」としています。つまり、ESG投資することでより高い投資収益をあげることを狙っていると同時に、ESG投資をアナウンスすることによって、企業にESGに配慮することをうながしているのです。

以上

2018/2/20

© kota nakako, gcs

[1] 2000年代半ばに国連が責任投資原則(Principles for Responsible Investment; PRI)を提唱し、その中でESGという言葉を使ったことから、従来のSRI(社会的責任投資: Social Responsible Investment)の流れを受けてESG投資という動きにつながりました。

[2] 寺山論文「ESG投資の多様な成り立ちと投資手法について」

[3] 櫻本・加藤・村岡・鈴木論文「エンゲージメントを通じたESGの推進」

[4] 同上

[5] 伊藤論文「ESG投資と企業価値:CSR to CSVの観点から」- CSVとは、ハーバード・ビジネスクールのマイケル・ポーター教授が提唱するもので、トヨタのプリウスに見られるように、環境負荷低減が消費者の共感を呼び、トヨタの利益に多大に貢献するような中期的な経済価値の原動力となることを意識した社会価値への配慮を指す

[6] 内論文「ESG指数とパッシブ運用―多様なESG投資」

 

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