‘経済・投資 Money’ カテゴリ

ケインズの投資-38 バリュー投資の先駆者ケインズ Keynes’ Investments-38 Inventor of Value Investment

2025-09-08
キングス・カレッジ・エステート委員会への覚書 1938年5月8日 (続き) 以下は、「キングス・カレッジ・エステート委員会への覚書」(1938年5月8日)の後半。 バリュー投資の先駆者ケインズ ここで、ケインズは、投資の三原則を上げている。バリュー投資の先駆といえる内容だ。ケインズは、前述で、自らを「信用循環投資の発明者」と呼んでいるが、これは、ケインズ一流の逆説的表現、皮肉といってよい。ここでは、信用循環投資はできない、実行性が無いということを述べている。実際には、バリュー投資の有効性を説いている。そして、ほぼ100%信用循環投資を行ったとしても、バリュー投資の結果は、それを上回っていることを、事後評価から明らかにしている。 また、日々の市場価格の無い不動産と比して、上場株式を投機的で、ゲームの性格を帯びたもの、社会的価値の無いものと見ることの誤りも指摘している。「投機家は気づい...
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ケインズの投資-36 信用循環投資の発明者 Keynes’ Investments-36 Inventor of Credit Cylcle Investment

2025-09-01
信用循環投資の発明者ケインズ R.F.カーンへの書簡(1938.5.5)は、ニューヨークダウが前年7月から3月に50%近く下落した後のもの。 金利の一般理論と信用循環投資 ケインズは、経済学者として、とくに金利に関して深く鋭い洞察力をもっていた。ケインズ経済学の革新性は、勿論マクロ経済学の創始ということにあるのだが、その一面は、古典派経済学の金利理論を明らかにした上で、新たな「金利の一般理論」("The genral theory of the rate of interest")を打ち立てたことだ。そこでは、金利を、限界消費性向、資本の限界効率と並んで、独立変数として総需要、国民所得の決定要因としてとらえた。当然のことながら、金利変動、信用循環にはことさら鋭い目をもっていた。信用循環投資は、その強みを生かした、ケインズならではの投資法であったともいえる。ケインズが自らを「主たる発明...
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ケインズの投資-35 選択と分散と集中 Keynes’ Investments-35 Selection, Diversification and Concentration

2025-08-31
厳選され程よく分散された少数銘柄への集中投資のすすめ [プロヴィンシャルのための覚書 (38.3.7) 続き] 3つの機関:類似性と違い ケインズは、自らが関わる3つの機関、キングス、ナショナル・ミューチュアル、プロヴィンシャルの類似性と違いについて説明を試みている。大まかに同様だと言っているが、特にキングスが優れているといっている。それは、知識と判断力をもった少数の投資口、証券により大きく投資しているためだ。 ファンドの規模と投資数 ファンドの規模は、キングス:プロヴィンシャル:ナショナル・ミューチュアルで1 : 2.5 : 10 だ。一方、異なる投資の数は、キングス130、プロヴィンシャル325、N.M.275。 プロヴィンシャルは、異なる投資の数を、100程度までに絞ることによってパフォーマンスを大きく改善できる可能性が高い、と指摘している。 選択と分散と集中 ここで...
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ケインズの投資-33 キングス・カレッジとの比較 Keynes’ Investments-33 Comparisons with King’s College

2025-08-27
キングス・カレッジのファンド-II が米国株を含み最もアクティブ 規模がパフォーマンスに影響との示唆 ケインズが関わった、キングス・カレッジ、ナショナル・ミューチュアル、プロヴィンシャルの投資パフォーマンスの比較を行っている。ファンドの規模は、キングス・カレッジ、プロヴィンシャル、ナショナル・ミューチュアルで、1:2.5:10になる。このことは、相対パフォーマンスに影響を与えている、と述べている。 キングス・カレッジには5つのファンドがあり、このうち、最もアクティブに運用しているのが、米国株を含むファンド-II だ。ファンド-II の9年間(1928.9.1-38.1.1)の上昇は、年率約14%。 (以上、KN注) 以下、「プロヴィンシャル保険会社のための覚書 (1938年3月7日)」の続き。 キングス・カレッジとの比較 カレッジには5つの投資ファンドがある。そのうち3つは信...
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ケインズの投資-31 美人投票説とバリュー投資 Keynes’ Investments-31 Keynes’ Beauty Contest Theory and Value Investment

2025-08-22
ケインズの美人投票説とバリュー投資の確立 ケインズの経済学と投資活動 投資家としてのケインズは、個人での投資の他に、母校キングスカレッジ、シティではナショナル・ミューチュアル、プロビィンシャルという保険会社の資産運用に役員としてかかわっていた。ケインズの理論的、論理的かつ実践的な経済学には、まぎれもなくケインズの投資家としての経験が反映されていた。 ウォールストリートの美人投票説 ケインズ一般理論における資本市場観、特に株式市場観には、市場の非効率性に関連する言説がある。美人投票説がその典型だが、ウォールストリート、米国株式市場のあり方に対する批判も手厳しい。ケインズ(1983-1946)が活躍したのは20世紀前半だ。 ケインズの「一般理論」とベンジャミン・グラハムの「証券分析」 米国でバリュー投資のバイブルといわれるベンジャミン・グラハムの「証券分析」が出版されたのは1934...
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ケインズの投資-30 45年総選挙の結果(チャーチル敗退)を受けて Keynes’ Investments-10 Upon the result of the General Election of 1945 (the defeat of Churchill)

2025-08-19
追伸 結論は変わらず、むしろ強める つむじ曲がり?の1945年イギリス総選挙 イギリスでは終戦時1945年7月5日に総選挙が行われた。大戦を勝利に導いた保守党のチャーチルが敗れた。労働党が単独過半数の議席を獲得し、労働党党首クレメント・アトリーが首相の座についた。つむじ曲がりのいかにもイギリスらしい結果といえるだろうか? 金融緩和、賃金物価上昇を予測 株式保有増加を示唆 ケインズのこのF.C.スコットへの書簡は、45年7月25日付けだが、以下の追伸で、選挙前に書いたが、選挙結果を待って送付することにした、と記されている。そこでは、当面は不安定な状況があるだろうが、選挙前に書いた結論に変化は無く、むしろ強めるだろうとしている。その第一の理由が、新内閣が、金融緩和に動くだろうから、というものだった。ここでも、ケインズは、物価上昇を予想し、株式の投資を増やすことを示唆している。 【F....
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ケインズの投資-28 キャッシュ・ポジションについての意見の相違 Keynes’ Investments-28 Dispute over cash position

2025-08-17
キャッシュ・ポジションについての意見の相違 保険会社の流動性 キャッシュポジションを減らすべきとしたケインズの意見に反して、スコットは突然、銀行預金ポジションを増やした。両者の意見の相違は縮まらなかったようだ。 ケインズは、保険会社は一般的に流動性が高いこと、また、プロヴィンシャルは不動産資産をあまり持たないため、特にそうであることを指摘し、キャッシュ・ポジションを増やす必要は無いと述べている。市場性有価証券は流動性が高いことを考慮すべき、としている。 貨幣価値の下落と株式の過小評価 終戦時にあたって、貨幣価値の下落が続くだろうと指摘している。そして、貨幣価値の下落に対して、また、利子率の下落に対して、株式は割安に評価されており、今後そのパフォーマンスが際立って良くなるだろう、という趣旨のことを述べている。 バリュー投資の先駆者ケインズ 優れた経済学者としての知見とプラクティ...
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ケインズの投資-26 安全第一とは? Keynes’ Investments-26 What is Safty-first?

2025-08-08
安全第一とは? - What is Safety-first? ここでケインズは、安全第一という投資方針について、「異なる方向性をもつ小さなギャンブルを多数持つことにある」のでは無い、「(少数の)*十分な情報がある会社に大きな持分を持つ」ことこそが、安全第一である、と主張する。ケインズが「安全第一」とするのは、ポートフォリオ運用における分散投資という概念にあたるといってよいだろう。(KNコメント) 【F.C.スコットへの書簡 1942年2月6日付】(続き) (4) キャピタルゲイン狙いの投機的投資の良い例は、南ア株や紛争地域の石油会社などです。のような投資でキャピタルゲインを得られる可能性を仮初めにも、否定すべきではないでしょう。しかし、このような投資に賛成できないのは、適正な判断を下すための情報が欠如していることであり、そのリスクは明らかに多大です。安全第一というのが、十分な情報が...
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ケインズの投資-24 アルファ(α)を説明する苦労 Keynes’ Investment-24 Difficulty to explain alpha(α)

2025-08-07
アルファ(α)を説明する苦労 優れた投資パフォーマンスは、アルファ(α)が生み出すものだろう。かなりの裁量をもっていたとは言え、ケインズは、しばしば、その投資判断についての説明、説得を(強いられて?)行っている。個人の運用の方が、「プロヴィンシャルやキングスの運用よりもかなり良い」とケインズは、前にも述べている。他者にはない、独自な視点、アルファ(α)をもっているがゆえの優れた投資パフォーマンスであり、それは、同時に他者にはなかなか理解できないしろものであろう。だからこそアルファなわけである。運用会社の他の役員の理解を得ながら行うというのは一苦労だったと推察される。(以上、KNコメント) 一つの良い株は、10の悪い株よりも安全 「1つの良い株は10の悪い株より安全」というのは、ケインズの「厳選された少数株への集中投資」という投資三原則の一つを示している。また、そういった良い株に、(割...
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ケインズの投資-22 一石二鳥の取引 Keynes’ Investment-22 To Kill two birds with one stone

2025-08-04
一石二鳥の取引 裁定取引 ケインズの投資法は、基本的には本質的価値(Intrinsic Value)に基づくバリュー投資であるが、ミスプライスの発見による裁定取引的な運用があった。下記書簡で「市場の混乱の結果であるように見え・・・運用担当者が利回りテーブルをじっくり見れば直ちに修正される」との表現からそれをうかがい知ることができる。 ここでケインズは、長期債から同様の信用力の短期債へのスイッチで同じかより良い利回りを確保できる、稀な(逆さまな)が状況が生じていると指摘、早期に動くことをうながしている。 タックス・シールド ケインズはさらに、当会計年度に、税対策のために、あえて出した実現損をタックス・シールドとして利用し、長期債の売却の実現益をぶつけることによる節税効果について述べている。 長期債から短期債へのスイッチにより、長期債でキャピタルゲインをとる。その資金で、短期債を購...
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著書のご紹介

新NISA時代の投資のヒント 投資・経済短歌&コラム: バフェットとケインズの投資法etc.


みんなの財布がふくらむ 新・利他の経済学: 物と心が豊かになる (GCS出版)


アナリスト出門甚一 ストーリー&エッセイ集: 分析と創造と怠惰の間(ゼネラルCS出版).


パウル・クレーのある部屋: 画家への思いとアートプリント・インテリア(エッセイ集) (GCS出版)


試験に役立つ 経済学短歌: 生活、ビジネス、投資のセンスをみがく (ゼネラルCS出版)


相場格言コラム・株投資短歌 (ジー・シー・エス出版)


英詩のリズムで読む新英訳百人一首 Reading ‘The Hundred Poems by One Hundred Poets’ in English Verse (ゼネラルCS出版)


短歌のリズムで読むシェイクスピア・ソネット: 14行詩をたった31文字ではやわかり (GCS出版)


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財布がふくらむ 利他の経済学: 物と心が豊かになる発想転換の書 (GCS出版)


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酒・金・女etc. 江戸のパロディ 大田南畝の狂歌 Nanpo Ota’s Kyoka - Parody of Edo: 和英対訳コメント付き in Japanese and English (GCS出版)


古今和歌集 - 紀貫之の仮名序と和歌 Kokin Wakashu - Preface and Waka of Ki noTsurayuki: 和英対訳 Japanese - English Translation (GCS出版)


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