新・利他の経済学-5 The New Economics of Altruism

中湖 康太

新・利他の経済学-5 The New Economics of Altruism – 株式会社ゼネラル・カラー・サービス 中湖康太 経済文化コラム (general-cs.tokyo)

公共財

公共財というのは、外部経済がはたらく財・サービスです。通常、公共財というと電気、通信、ガス、水道、下水、道路、空港、港湾、公園、警察、消防など、社会インフラといわれるものがイメージされるでしょう。経済学における(純粋)公共財の要件、性質として、次の2つがあります。

1. 消費の集団性(非競合性)

2. 消費の排除不可能性

◎ 公共財(コウキョーザイ) 外部経済 はたらいて 集団消費(シュウダンショーヒ)し 排除ができぬ (経済学短歌) 

◎ 公共財(コウキョ-ザイ) 集団性と 排除不可(ハイジョフカ) ふたつの性質(セーシツ) あると知るべし (経済学短歌)

消費の集団性の典型的な例として、大気や環境があります。対価を払える人だけに大気が供給されるということは、非現実的です。警察や消防サービスも集団性があってはじめて意義があるといってよいでしょう。つまり、警察サービスに当事者が対価を支払うことが必要になった場合に、そもそも警察サービスは成立しません。消防もしかりです。このように、財・サービスの成り立ちから、市場メカニズムによる供給がそぐわないものがあります。また、より重要なことは、私的競争メカニズムにまかせておくと過少生産(供給)となってしまうことがあります(後述)。

消費の排除不可能性は、その財・サービスを消費することを排除することができないということ。例えば、道路、公園、大気、環境の消費を排除する、対価を払わなければ使えないということは通常はありません。そのような性質です。もっとも有料道路や入園料をとる庭園もありますが、この場合、一般の道路、公共の公園を指します。大気、環境はまさに消費の排除不可能性を象徴する公共財です。

公共財の外部性(外部経済)

公共財には、外部性(外部経済)が存在します。消費者は、消費の集団性、消費の排除不可能性のゆえに外部経済を享受することになります。言い換えると、公共財は、競争的価格メカニズムによっては供給されない、ないし過小供給(生産)されることになります。したがって、外部性で述べたように補助金政策や、政府や公的セクターに生産を委ねることが、公共財を最適供給するために妥当性を持つということになります。

◎ 公共財 私的競争(キョーソウ)に 任せては 過少供給(生産) まねくものなり (経済学短歌) 

政府や公的セクターによる供給に委ねるにしても、そのあり方が地球的利益の最大化という目的にかなっているか、いないかが問題となります。政府だからといって、有効需要の創出を大義名分として、非効率な公共投資を行ってもよいということではないのです。利他の経済学の観点からの政府支出の目的は、社会全体の生産性、社会生活の快適さの向上であり、それによる地球的利益の最大化です。

政府の行動についても、効率性が問題になります。政府も、税収、国債の発行によって調達した資金を、社会的利益の最大化の観点から、効率的に使う必要があります。有効需要創出のためといって、バラマキ行政をやってよいとうわけではありません。

一般に、公共財・サービスでも、政府による供給が適しているのか、競争メカニズムによる供給が適しているのか、明確に分けられないものがあります。例えば、電気、水道、ガス、通信サービスなどです。ポイントは、利他の経済学の地球的利益最大化の観点から、政府による供給が適しているのか、民間の競争メカニズムによる供給が適しているのか、常に社会的にチェックする必要があります。

通信サービスは、かつては、その初期投資の大きさ、また規模の経済の存在から、政府ないし公的企業による提供が適切とされてきました。しかし、テクノロジーの革新や社会的経済的環境の変化により、公的企業による独占の弊害、独占価格が問題とされるようになりました。競争メカニズムの導入による通信サービスの提供が、非効率性を排除することに繋がりました。

公共財の最適供給量の決定

理論的には、公共財の最適供給量は、公共財の社会的限界便益が限界費用に等しくなった点、つまり、公共財の追加的1単位の供給により得られる社会全体の追加的便益が、公共財の追加的1単位に必要な追加的費用の額に一致する点です。これは、サミュエルソン条件といわるものです。概念的な公共財の最適生産量の決定条件です。

◎ 社会的 最適生産 限界の 便益等し 限界費用 (経済学短歌)

◎ 公共財 最適生産 社会的(または宇宙的) 限界便益 即費用なり (経済学短歌)

◎ サミュエルソン 条件こそは 社会的 限界便益 等し費用(ヒヨー)なり (経済学短歌)

この場合の社会的便益というものには、タンジブル(tangible、実体的)なものもあれば、インタンジブル(intangible、非実体的)なものがあります。その意味で、消費者行動の理論における効用に近い概念です。しかし、消費者行動のおける効用は、個々の経済主体が得るものです。個々の消費者はその効用を個々に評価できます。

公共財の供給にあたり、それが、補助金政策により民間経済主体が行う場合であれ、政府・公共セクターが行う場合であれ、「社会的限界便益」を適切に把握できるか、計量化できるかが問題になります。

利他の経済学(=地球的利益最大化)の動的プロセス

このように、公共財・サービスの供給が、政府・公的セクターあるいは、民間競争メカニズムに委ねられるべきかは、一義的に決まるものではありません。また、公共財の社会的最適生産量は、地球的利益最大化(=利他の経済学)の観点から、消費者、企業、政府が、常に、動的チェックすることが必要になります。

 

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