仮想通貨だけでないブロックチェーン: JAI 2018夏号(1)

中湖 康太

本号(The Journal of Alternative Investments, Summer 2018)には、7本の論文が掲載されている。1本がブロックチェーンに関するもの、3本がヘッジファンドに関するもの、3本が超過リターンを生み出す分析、予測、市場の非効率性などを扱っている。今回は、ブロックチェーンに関するものについて見てみたい。

1. ブロックチェーン:データモール、コイン・エコノミー、キーレスペイメント(“Blockchain: Data Malls, Coin Economies, and Keyless Payments” by Zura Kakushadze and Ronald P. Russo)

仮想通貨だけでないブロックチェーン・テクノロジー

ブロックチェーンは、仮想通貨に関わるテクノロジーととらえられているが、本論文では、データモール(特定のデータ市場)、データ・プロブナンス(データの出所・履歴)、キーレスペイメント(鍵のいらない支払い。メールアドレスやその他の覚えだしやすいID等)など、ブロックチェーンを利用した新しい領域、アプリケーションについて述べている。

あらためてブロックチェーンとは

ブロックチェーンというのは、本質的には分散型台帳技術、分散データベースである。ブロックと呼ばれる順序付けられたレコードの連続的に増加するリストを持つ。各ブロックには、タイムスタンプと前のブロックへのリンクが含まれている。理論上、一度記録すると、ブロック内のデータを遡及的に変更することはできない。ブロックチェーンデータベースは、祖Peer to Peer(相互の)ネットワークと分散型タイムスタンプサーバーの使用により、自律的に管理される。

ブロックチェーンは仮想通貨の中核技術であるが、それに留まらず、多様な分野に応用できる、というのが本論文のインプリケーションである。

実際に使われながら磨かれていく: “Pragmatism over ideology”

筆者は、「ブロックチェーン・テクノロジーは既に(経済社会に)甚大な影響を与えており、なかには過渡的なものもあるだろうが、今後もそうあり続けるだろう」とし、”Pragmatism over ideology!”と論文を締めくくっている。言わんとするところは恐らく、あるべきテクノロジーを考えているうちに、ブロックチェーン技術は実際に使われることによって磨かれ普及していくだろう、ということではないだろうか。

貨幣供給を誰がコントロールするのか?

経済学的な視点から、少しコメントを加えると、恐らく、ブロックチェーンに基づく仮想通貨はまず取引動機に基づく貨幣として使われるだろう。そして信頼性が確立されたら恐らく、投機的動機に基づく通貨、投資対象としての通貨としての地位を確立するのではないか。しかし、仮想通貨についても貨幣供給量が適切にコントロールされなければ、貨幣価値が棄損する、大きく下落する可能性が高い。その論理、メカニズムは伝統的通貨、ソブリン通貨と同様であろう。仮想通貨といえども通貨である以上、経済、通貨の論理、メカニズムのもとにあるのである。あるいは自律的かつ適切な貨幣供給コントロールがAIなどによってブロックチェーンに組み込まれるというような時代がくるのであろうか?

柔軟かつオープンな発想がもっとも大切

仮想通貨やそのもとになっているブロックチェーン技術に、信頼性が本当にあるのだろうか、自分の大切な情報やデータが自分の知らないところで勝手に独り歩きし悪用されはしないかなど不安もあり、現在のところ疑心暗鬼である。私たちは既に、Cloudコンピューティング、SNS、GPSなどによって日々そういったことに接している。新しい技術や考え方を頭から否定することは最も危険なことである。個人も企業も慎重であると同時に柔軟、オープンな姿勢でブロックチェーンに向き合うことが重要であろう。

つづく

2018/9/19

中湖 康太

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