‘ノベルズ Novels’ カテゴリ

ITバンク・フォアサイト・ファンド(ITFF) (ノベル)

2020-10-13
ITバンク・フォアサイト・ファンド(ITFF) (ノベル) 巨額ファンド(ITFF)の立ち上げ 孫子正太郎のITバンクグループは数年前、ITバンク・フォアサイト・ファンド(ITFF)を立ち上げた。正太郎のITセクターでの投資のトラックレコード(実績)は目を見張るものがあった。インターネットポータル最大手のリリパット、現在の通信大手3社の一角、ITバンクモバイルのベースとなった東亜テレコムへの投資、そして何よりも2004年の中国のEコマース最大手のバッリカへの約20億円のベンチャーキャピタル投資の成功があげられる。バッリカの株式時価総額は円換算で80兆円にも達している。香港、ニューヨークへの上場前には3割強を保有していた。上場後、一部売却、今回のパンデミックへの防御策として現金を積み上げるため、さらに2%程売却したが現在も約20%を所有している。その持分価値は約16兆円にのぼる。 集ま...
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アクティビスト(ノベル)

2020-10-07
アクティビスト エリス・アセット・マネジメント 大量保有報告 出門は、今回のITバンク孫子正太郎の行動にはアクティビストの影響があると感じていた。確かに、4.5兆円に上る保有上場株式の売却という大胆な行動は、スケールの大きい正太郎ならではのものであるともいえる。しかし、そこにはいつもながらの大胆不敵さとは異なる、何かに追い立ててられているところがある、と感じたのである。 これは正太郎が必ずしも意識していることではないかもしれない。おそらく正太郎は、パンデミック下でのITバンクの投資先の企業の事業、財務をみて、企業家として、そして投資家として自らとるべき行動をとっているだけだ、と考えていた。また、問われればそう答えるだろう。 ITバンクの株主価値が過小評価されている、と孫子正太郎は、過去数年のIRプレゼンテーションで主張してきた。ITバンクの投資先であるITセクターのユニコーンのひと...
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デットプリンシプル(ノベル)

2020-10-03
デットプリンシプル 正太郎の経営プリンシプル(原則)のひとつにデット(負債)を最大限に活用するということがある。程度問題であるが、これは理に適った考え方であると出門も考えた。世のいわゆる優良企業は、有利子負債に対して慎重である。ゴーイングコンサーン(永続企業)として、いかなる経済状況、特に不況、恐慌にも耐えうる財務体質を維持しようという考え方が根本にあるといえるだろう。 経済は時に想定外のリスクに直面する。今回のパンデミックもまさにそれだ。科学、医療が発達した現代社会において、疫病で経済社会が麻痺におちいるということを想定していた投資家はほとんどいないかった、といえるだろう。仮に、視野に入れていたとしても、いつくるということまでは予測できないわけだ。 有利子負債を保有上場株式価値の3分の1に もちろん、これはイベントリスクといわれるもので、投資にあたっては常に念頭においておかなけれ...
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ITバンクのパンデミックへの対応(ノベル)

2020-10-03
ITバンクのパンデミックへの対応(ノベル) 最大の防御は現金 孫子正太郎は、パンデミックへの最善の対策は、防御、守りを固めることであり、それはすなわち現金を積み上げることだと語った。正太郎は、ITバンクは事業会社ではなく、投資会社であるとしている。ITバンクの投資上場有価証券の時価総額は28兆円に上る。それに対して純有利子負債は6兆円。その差額である、22兆円が株主価値である、と正太郎は言う。これに対してITバンクの株式時価総額は11兆円である。つまり、ITバンクは、正太郎が言う株主価値の二分の一が市場がつけたITバンクの株価評価ということになる。正太郎は、ITバンクは本質的株主価値に対して50%のディスカウント、割安に評価されている述べた。 出門は、その物言いに、正太郎の苛立ちを感じた。おそらく、この説明会の機関投資家たち、またメディア、報道機関の記者たちも同様に感じたであろう。否...
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ITバンクグループ2021年第1四半期決算 (ノベル)

2020-09-15
(ノベル アナリスト出門甚一の冒険 - A Novel: The Adventure of Jinichi Demon, Senior Analyst) ITバンクグループ2021年第1四半期決算 パンデミック下の決算 出門はITバンクグループの2021年第1四半期の決算説明会にビデオコンフェレンスで参加した。この4-6月決算はいうまでもなく、全世界をCOVID-19というパンデミックが襲った期である。孫子正太郎CEOがいつものように自らプレゼンテーションを行った。ある意味では自分に酔っているとも思われるが、自らこの時価総額12兆円の企業をオーナーシップを持って経営する気概、男気(おとこぎ)が前面に出ているとみることの方が適当だろう。 孫子正太郎のオーナーシップ ITバンクは孫子自らが21%を所有している。オーナーシップをもった経営でその意味でガバナンス(経営と所有の分離)の問題...
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アナリスト出門甚一の冒険 矛盾に満ちたミーティング

2019-02-13
村岡昭三との矛盾に満ちたミーティング 出門と房田は、村岡インベストメンツの会議室の通された。しばらくすると村岡昭三があらわれた。村岡は、出門と房田に目を向けるわけでもなく、60センチほど前を見るような感じで席にすわるとようやく出門と房田にチラリと視線を向けた。房田は言った。 ― 本日は、ありがとうございます。UPGの株式調査部メディア・テクノロジー担当の出門と一緒に参りました。先日、お話ししましたように、出門は東亜ラジオの株価について割安であるとのレポートを出しております。 村岡は表情を変えなかった。そして出門の説明を求めることなく話し始めた。 ― 東亜ラジオは、レインボーブリッジテレビの40%を持っている。その価値が株価に反映されていない、そんなことは説明されなくてもわかっている。言いたいことはそれだけかね。 村岡は、説明されなくてもそんなことは分かりきったことだ、という表情を...
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アナリスト出門甚一の冒険 村岡ファンド

2019-01-30
その日、出門はセールスの房田祥子と大手町からタクシーに乗り、内幸町の村岡ファンドのオフィスに向かった。房田はいう。 ― ラジオ局の東亜ラジオについて出門さんの見方を説明していただけますか。 出門は通常、大手の機関投資家に対して説明することが多い。房田祥子のアレンジで独立系の村岡ファンドの代表村岡昭三と会うのが楽しみだった。出門は房田に言った。 ― 房田さん。このミーティングをセットしてくれてありがとう。面白そうだね。村岡ファンドはやはり目のつけどころがいいね。 村岡ファンドは、もの言う株主として話題になっていた。ジャパン・テクスタイルの株を買い占め、株主として、遊休資産を売却して配当を増やすように要求していた。ジャパン・テクスタイルの株価は低迷していた。本業は、国際競争力のなさから先細りとの見方が広がっていたのである。村岡ファンドの代表である村岡昭三は、経営陣に遊休資産を活用できな...
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アナリスト出門甚一の冒険 鈴木商事の貴金属トレーディング巨額損失

2019-01-30
その日の早朝、出門は携帯端末のアラーム音で目がさめた。出門のカバーする大手総合商社の鈴木商事が貴金属トレーディングで5,000億円の巨額損失を被ったとのニュースが、ニューヨークで報道されたからである。電話の向こうは、ニューヨークセールスのカレンだった。 「甚一、ごめんなさい。でもあなたをおこさなちゃならないの。鈴木商事が貴金属トレーディングで50億ドルの損失を被ったとのニュースが流れているの。あなたの鈴木商事の株価に対する評価を聞きたいの」”Jinichi, I am sorry. But we need to wake you up. It’s reported that Suzuki Trading Co. incurred $5 billion significant losses, because of its precious metal trading. We want to...
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アナリスト出門甚一の冒険 限界的な快楽

2019-01-28
ジェームズ・ディーンの映画に「理由なき反抗」という佳作がある。ジェームズ・ディーンを一躍スターへと引き上げた映画は大作「エデンの東」であったが、出門はむしろ「理由なき反抗」が好きであった。この映画にチキンランという有名な場面がある。 この映画は、ジェームズ・ディーン演じる高校生ジムが、転校して初めて学校にでる1日の出来事が描いたものだ。1日の出来事で物語が完結するのはギリシャ悲劇のスタイルだという。だらだらとした日本の大河ドラマに比べるとなんとエレガントであろうか。 出門は子供の頃、古事記をベースにしたアニメ映画、それは確か東映アニメだったと思うが、何か惹かれた思い出がある。それは、出雲の国のヤマタノオロチの話だったと思う。これも恐らく1日で完結する話ではないだろうか。今考えると日本人の郷愁をさそう原風景がそこにあるように感じる。そしてそれは美しい。古典的な物語の原形なのではないだろう...
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アナリスト出門甚一の冒険 学生生活 (1)

2019-01-28
学生時代(1) その日、出門は京南大学の経済学部の午前の経済原論の授業にでようと思った。授業に出る前、横東線の吉日駅の喫茶店に立ち寄った。授業はあと10分というところだ。そこへクラスメートである京南大学の付属女子高出身の秀才島田紀子が足早に通りかかった。紀子は従業の10分前にもかかわらず、ゆうゆうとコーヒーを飲む出門に「もうすぐ授業よ、何やってるの」といわんばかりの表情を見せた。出門は、「秀才女子が授業ギリギリとはめずらしい」と声をかけようと思ったがやめた。もちろん気恥ずかしいからだ。 出門は、この何か、学生だけに許された時間、空間の自由な空気が好きだった。大学生活というのは、校則に縛られ、良い意味でも悪い意味でもお互いをある程度知り合った、いわば村社会といもいって良い高校時代と違った、気ままさがあった。学問にはげむもよし、スポートにはげむもよし、サークル活動にはげむもよし、趣味にふけ...
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